眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「あやかし古書庫と少女の魅宝」第1巻

ドリヤス工場・著(一迅社

以前から気になっていた。本屋で表紙をみたときの衝撃。水木しげるの新作?と思いきや、聞いたことのない著者名、それもドリヤス工場って…。やっと読んでみて、その面白さに完膚無きまでに叩きのめされたといいますか…。小さな古本屋を祖父から受け継いだ高校生の前に、謎の美少女と、暗躍する秘密結社が現れて世界を支配出来る魅宝の争奪戦になる…主に古本屋と学校を舞台に、という、スケールが大きいんだか小さいんだか、これを水木しげるタッチの絵で描くというアイディアが素晴らし過ぎ。同人誌では他にも色々な漫画のパロディを描かれているようで、これはもう扉をみるだけで、ぷっと吹き出してしまう可笑しさなのだが、商業漫画として描かれているこの作品では、水木絵であることに逃げていないというか、表層的なパロディ的な笑いだけに終わらせていないところに、並々ならぬ気合と誠実さを感じますね。1話完結で、きちんと話を作りながらも、連続する物語としても面白く読ませるところは、単なる絵のコピーだけでは無理だろうと。敵キャラクターと、使う技の多彩さ、おどろおどろしさと、とぼけた雰囲気。さらに衝撃的なのは、美少女と評されている七星も、中神先輩も、水木しげるの絵ですから、傍目には美少女なわけがないのに、これがそう見えてくるという面白さ。イクオを巡っての恋のさや当て(?)にもワクワクしますね。世の中には面白いことを考える人、そして考えただけでなく本当に面白く作る人がいるのだなあ…。お気に入りの漫画家がまた一人増えたな…。