眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「アサシン・ゲーム」

監督はアーニー・バーバラッシュ。2011年のアメリカ映画。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムスコット・アドキンスが激突するアクション映画と思っていたら、真っ当なサスペンス映画だった。もっと無責任な肉体駆使系のアクション映画と思っていた。ヴァン・ダムの年齢的なものもあるのだろうか。ここでは殺しをビジネスとして、淡々と処理していく男を演じている。潔癖症であり、人と接することを避けた生活は、自己完結しているようにみえて、一抹の寂しさも感じさせる。おそらくいわくのある過去を持つ男が、隣に住む女性を助けたことから、人間的な温かみを取り戻して行く。一方のアドキンスが派手に動くアクションは一手に引き受けた感があり、映画も彼を主人公にした展開。妻を再起不能にしたウクライナの犯罪組織のボスに復讐しようとするアドキンス、出所したボスの暗殺を依頼されたヴァン・ダム、罠をかけるインターポールの悪徳刑事、ヴァン・ダムに手違いで弟を殺されたボスの怒り、といった四者が入り乱れる。とにかく情け容赦のない展開で、仲間とか身内とかが実にあっさりと命を落としていくのがみていて辛い。普通の人間らしい感情を持っている人間はことごとく悲惨な殺され方をしていく。物語のベースが重すぎるので、軽快なアクション映画にはならず、シリアスなサスペンス映画として語られる。映画の見せ方は直線なれども、四者による物語はやはりふくらみがあり、シリアスな要素と合わせてなかなかにドラマティック。ヴァン・ダムの抑えた芝居もうまくはまり、渋い魅力が出ているし、アドキンスの直情も悪くなく、悪役のボスを演じるイヴァン・ケイの凶暴さと残酷さ、ふてぶてしさが更に盛り上げる迫力。

ウクライナなど、東欧を舞台にしているせいか、そのイメージ作りのためか画面が少し黄色っぽく色付けがなされており(砂っぽい印象があるから?)、彩度を落とした感じで全編が描かれている。雰囲気としては悪くないけれど、少し飽きてしまった。もうちょっと映像上の変化がほしいところ。