眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

イントゥ・ザ・ストーム(2014)

INTO THE STORM

監督はスティーヴン・クエイル

アメリカ中西部の小さな町に襲いかかる超巨大竜巻。卒業式真っ最中の学校、廃工場でビデオを撮る高校生、金儲けのために竜巻を追いかけるハンターたち。史上最大規模の竜巻から逃れることは出来るのか。

製作費5000万ドル、スター級俳優はひとりもおらず、直前に公開されたアメリカでも、大ヒットにはなっていない。何一つとして、興行上有利なものは見受けられないのに、夏休み終盤、どうしてこの時期にこの作品が公開になるのか。と、不穏な気持ちすら抱きつつ、劇場に足を運んだが、これは面白かったです。パニック映画として、非常に潔い作り方。大変シンプルな内容で、竜巻の脅威を見せることを第一とし、その凄まじさをより身近に実感させるために人間ドラマがある、という配分。それならば、ドラマ部分はおざなりなものかというと、決してそうでもない。それぞれに葛藤を抱えた人々を簡潔に描いて、しかも彼らに嫌みがない。素直に応援できるのがよい。作劇上、単純な描き方がよい、という選択の結果だったのかもしれないけれど、トラブルが起きてもそれを他人のせいにしない、他人を責めない、という展開になっている。登場人物にとっても、観客にとってもストレスにもなってしまうような人物がいないのは、ちゃんと計算した結果なのではないかと思いましたな。ある場面で、サラ・ウェイン・キャリーズとマット・ウォルシュの間の確執ゆえに、そういう対立が起こりかけるけれど、それとて、彼ら以上に責任を感じる人物が割り込むので、そこで止まってしまう。責めても意味はなく、だから反省した人間は次の行動で、その責任を果たす。その果たし方が、また壮絶なのだが…。その人の最期、あまりに美しくて、恐怖と共に変な感動もあるという、しばらく忘れたくない場面になっていたと思います。

見始めて知るのだが、実はこの作品もPOV映画だった。ときどき、これ誰の(何の)視点?という場面もあって、ちょっと混乱もするのだが、もう、POVであるから客観的で、リアルに見える、という感じではなくなっていて、普通にドラマですな。POVである意味は、ほとんどなくなっている。なので、そこにあまり目くじらは立てないでいただきたいですね。あとは、やはり見せ場の竜巻の描写。前段階として、突然ゴルフボール大の雹が降って来ることに始まり、竜巻発生の様子を、雲が渦を巻き始め、それが漏斗状に形を変え、周囲のものを巻き込んで巨大化していくのを、ちゃんとみせていくのが丁寧でよい。夜の道端で、電線から火花が散っているのを見つけて寄っていくと、火花の明かりで竜巻が見える、という恐ろしい冒頭シーン。そして今まで凄い勢いで迫っていた竜巻が突然消えてしまうという、恐怖。ヤツが次にどういう方法で来るかが予測出来ないというスリルまで加わる。その結果のあの巨大感!圧倒的な破壊と絶望感!あとは、ロケ現場にセッティングされた、破壊された車や家や瓦礫や木片など、そういったブツの持っている生の迫力による説得力が凄い。意外と規模が大きくセッティングされているので、ぞっとする迫力がある。超大作とは言えない、5000万ドルという予算ながら(といっても日本映画ではとてもひねり出せない額)、適材適所な予算配分がちゃんとなされているのだろう。竜巻の脅威を順序立てて、きちんと見せていくだけというシンプルなアプローチ。それだけで娯楽映画は充分に成立するのだ。

監督のクエイルは「ファイナル・デッドブリッジ」の監督だけあって、「竜巻に巻き込まれながら火あぶりにされる」という、あんまりな死に方を、さらりと撮るね。
こういう映画はやはり、大きな画面と大音響でみないと意味がない。わざわざ出向いて大正解。


しかしながら竜巻映画というのは、お安い映画(テレビ、DVDスルー含む)では定番のジャンルですよね。見ていると、どれも面白そうだ。





台風もあるよね。


こうなってくるときりがないな。これからもこういった映画が無数に作られるのであろうなあ。

しかしパニック映画、ディザスタームービーというのは、今となっては単純に喜べないジャンルになってしまったな。竜巻、台風、大雨、土砂災害、火山、地震、どれもいつ自分が巻き込まれるか判らないものになってしまった。昔もそうだったけれど、環境の変化によって、状況はより酷く、甚大になっているものも多いから。