眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

リバースエッジ 大川端探偵社〜FILE.4 アイドル・ 桃ノ木マリン

25年勤めた会社をリストラされたマキタスポーツ。気がつくと桃ノ木マリンの曲を聴いていた。30年前、アイドル全盛期に1曲だけで消えたC級アイドル。地元の田舎にキャンペーンでやってきた彼女の姿をみて一目惚れした彼は、その日握手した右手をずっと洗っていなかった。先の見えない今、彼女に会うことで、全てを断ち切れるのではないかと思い、桃の木マリンの行方を捜して欲しいと依頼するのだったが…。

マキタスポーツが恋に落ちた瞬間が素晴らしい。それまではラジカセみたいな音だったのが、途端にきちんとした音になる。光がいきなり射したみたいな、世界が広がる感じがちゃんと伝わる。

「瞳にA級保存」…。昔のアイドルっぽい曲だけど(イントロは「青い珊瑚礁」風)、「忘れないで」の繰り返しの部分とか、当時は絶対ない感じですよ。2014年という現在から、1980年代のアイドルをイメージして作った曲だなあ、と思いますね。耳に残るなあ。配信してくれないかね、これ。しかしながら、小池里奈のこの超絶的な可愛さはどうですかね。たまりませんね。こんなキュートな彼女が今どうなっているのか…という後半は大変衝撃的で、思わずコーヒーを飲んでたマグカップをぐっと握りしめてしまった。愕然とすること請け合い。冴えない人生を歩んできた人間にとってのアイドルとは何か。アイドルが人生を支えられるのか。それが例え虚像であったとしても。その答えのひとつがここにあるのではないか…。マリンとステージにあがるマキタスポーツに見えているものが、すべてなのだ。疑いを肯定した瞬間、これはそうなのだ、と信じた瞬間に見える世界。そしてそれは、彼の後半生を支えるに充分な輝きなのである。こんなに美しくも残酷な青春との決別があるだろうか。人生なんてなるようになるんだ、という言葉が力強かった。マジで泣けた。