眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

2014年 読んだ本のメモ

今年刊行されたものではなく、今年読んだもの。ノートにつけていたメモより。
「火を熾す」(ジャック・ロンドン・著/柴田元幸・訳/スイッチ・パブリッシング) 「野生の呼び声」が名高いため、動物ものの作家という印象だったのだが(シートンとごっちゃになっている)、この短編集を読むとそこだけに収まらない多様な書き手であったことが良く判る。どれも何かと戦う人たちの物語であり、時に勝ち、時に負け、時に生死不明であり、諸行無常な、生きることと死ぬことについて描かれている。が、生と死は輪廻のごとく繰り返される、作者にとっての永遠のテーマであったろうことは難くなく、描き続けることでそれに迫ろうという作家として突き詰めようとする姿勢に、切実で身を切るような厳しさも感じる。素晴らしい作品集。で、これらを映画化するならどの監督がいいか、と考えてみた。 「火を熾す」/ジョー・カーナハン 「メキシコ人」/ジョゼ・パリージャ 「水の子」/ジョン・セイルズ  「生の掟」/リー・タマホリ  「影と閃光」/クリストファー・ノーラン  「戦争」/ジョン・コルトレーン  「一枚のステーキ」/フェルナンド・メイレレス 「世界が若かったとき」/ギレルモ・デル・トロ  「生への執着」/トム・シックス…。という感じ。少しチョイスが古目か。あ、狼が出てくるのに、キャロル・バラードを忘れているな。
アメリカ映画風雲録」芝山幹郎・著/朝日新聞出版) 取り上げられているのは、クリント・イーストウッドドン・シーゲルセルジオ・レオーネロバート・アルドリッチスタンリー・キューブリック、ジョージ・C・スコット、フランシス・フォード・コッポラ、クェンティン・タランティーノ…。多くの文献を紐解くことで客観的事実(出典如何によっては憶測も含め)を時系列に並べ、作品が生まれ完成していくまでを俯瞰する。注意深く考察することによって、その奥に各映画の湛えているものを指摘し、明示してくれる、実にありがたいガイドであり映画論。読みながら、それらの映画を早速見返したくなる。「キッスで殺せ」「何がジェーンに起こったか」「ふるえて眠れ」「ワイルド・バンチ」「レザボア・ドッグス」はDVDを持っている。すぐにでもみればよい。
「ひとり旅は楽し」(池内紀・著/中公新書) 再読。観光地化された土地を巡り、名物料理を食べ、土産物を買い…といった、旅の確立された形とは全く無縁な、ひとり旅に関するエッセイ。自分と向き合うための、内的な道行きとしての、ひとり旅。目的もなく、理由もなく、思いついたら行動し、彷徨うように足を動かし、土地を巡る。土地の名前、気候、思い出。語られることは、文学や詩を通じた世界の広がりへと繋がり、その先には、ロマンという名の密やかなる夢がある。本当の旅行好きよりも、旅に憧れる気持ちをもつロマンティストにこそ読まれたい。折にふれては読み返したい、心の名著。
「シネマ古今集(瀬戸川猛資・著/新書館) 簡潔で明瞭な文章は、さすがにこの人の持ち味で、すぱっと斬っていくのも心地良い読み応えである。が、いささか、現在の映画(94、95年頃)への不満が強すぎて、読んでいて辛かった。よりレベルの高いものを求めることの意味が、どこにあるのかが判らないのである、わたし自身は。退屈なものは退屈なものとして愉しみたい。つまらなかった映画は、好みに合わず、で済ませていいんじゃないかな、と。つまらない映画について書く人をみていると、真面目だなあ、と思う。いいとかわるいとかでなく。
全然読めていない。この一年、何をしていたのだろうか。