眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

プロフェッショナル(1966 米) BSプレミアム


THE PROFESSIONALS
監督はリチャード・ブルックス

妻を誘拐された富豪に、その奪還を依頼された4人の男たちが、それぞれの持つ技を武器に、救出に向かう。

という映画だと思っていたのだが、想像していたものとは少し違っていた。「ワイルドバンチ」とほぼ同時期の作品だが、時代設定、舞台設定も似通っている。共に西部の時代が終わる頃であり、戦いに明け暮れたあの日々を、遠く思う人々が主人公になっていること。皆、年を食っているが、青春が終わるときの物語。青春の象徴とされるのが、この作品では革命であり、あれは主人公たち…リー・マーヴィンバート・ランカスター。そしてジャック・パランス…にとって、どういう意味があったのか。それを経て、今どうなのか、そしてこの先どう生きていくべきなのか…。ということを問うことになる。己のくすぶり続けている青春への思いに、どうケリをつけるのか。

クライマックスに相当するはずの、人妻(クラウディア・カルディナーレ)奪還が映画の中盤にある。そして列車を使って逃走、そこから先、さらにどうなるのか?と思っていると、ここで映画のトーンが変わる。それまでは、西部劇、活劇映画としての面白さで引っ張っていたものが、先にかいた、青春とは何か、という問答を描くものになる。追跡してきた悪党パランスと、時間を稼ぐために一人残ったランカスター。革命(青春)という名の輝きのもと、信じたはずの大義は何処へ行き、そして自分は今どう思っているのか、ということを、銃を向けあいながら、言葉を交わす。ふたりのやりとりには、かつて共に戦った者の共感がある。反目がある。革命へのゆらぎ、あきらめ。それでも執拗に革命にこだわり、女を追いかける男。挫折し、現実主義となり金儲けに走った男。こだわり続けるものを、心に宿し、時代と共にそれが終わろうとしているときにもまだ、あきらめきれずにいる男たち。映画全体のトーンを崩しかねない(というか崩している)尺をとって描かれる一連の場面こそが、監督ブルックスの真骨頂ともいうべき、お説教めいた部分だが、こここそを描きたかったのだろう、とも思われる。こんなにスケールの大きな映画でなければ、もっとじっくりとそこを掘り下げた映画になったろうに、とも思うのだが、娯楽活劇のなかでやるからこそ意味がある、とも思えるし、さじ加減はなかなか難しい。しかし、個人的には、これらの場面、こういう展開のおかげで、この映画が好きだ。他人には、半ばどうでもいいこだわりにしばられている人たちの物語。変わりゆく時代…依頼者は大富豪で、これからは物質と消費の時代がやってくる…に、過去を捨てきれぬ人たち。いわば負け犬たち。それでも、彼らの人生に、幸多からんことを、と祈りたくなる。

脇役に甘んじている印象の、ロバート・ライアンとウディ・ストロード。しかしながら、馬を愛するライアンの渋さは素晴らしい。荒っぽい調教をする男を、ぶん殴る登場シーンからしてかっこいい。敵の乗っていた馬を殺せと言われても、水を求めて北へ行くから逃がしてやりたい、という場面(それを聞くマーヴィンもかっこいい)。だが結局、馬は戻ってきてしまい、それで仲間がやられたことに敵も察知してしまう。すると、潔く、今度は殺すよ、という。逃げる途中でダメになった馬を撃つ場面でも、ライアンの顔が映されないが(画面外から銃声)、それだけに彼の苦渋の表情が目に浮かぶようである。ライアンが馬の手入れをする場面を思い出すと、よけいに辛さが沁みる。ストロードは鋼のごとき肉体が何よりも魅力だが、弓を扱う場面のしなやかな動きが素晴らしい…というよりも美しい、と言った方がいいかも。人に対する場面での律儀な対応は、奴隷だったかもしれない過去のなごりなのかもと思いつつ、一方で非常に理知的な人物にも見える。それに、言葉少なに着実に行動する姿は、プロ中のプロという感じがする。確かに二人は、マーヴィンとランカスターに比べると、扱いは軽いけれど、それでも魅力は発揮出来ていると思えたがな。

この映画のランニングタイムは118分。2時間ない、というのも驚かされる。ほんとうなら、過去の因縁などを描き込んで2時間半になってもおかしくないが、台詞と俳優の存在でさらりと描いてしまう。分厚いキャスティングはそういうことを可能にするんだなあ。描写不足に思えても、観客の想像にゆだねることが出来るのだ。こういうことは今の映画では出来ないねえ。

あと、チキータ(マリー・ゴメス)とランカスターのやりとりもよかった。敵の副官みたいな女性。おおっぴらに人前で胸をはだけさせて洗うような豪快な人。ノーとは言わない人。ランカスターによれば銃の扱いは一流。でも「ダンスは下手だ」という言葉に、彼女への愛情が見て取れる。パランスと共に追跡してきて、姿は見えずとも、声で相手がランカスターだと判ったときの表情(ベイビー、という言葉に反応)。そして戦いの末に命を散らすとき、抱きかかえるランカスターに、「ベイビーと言われたのは久しぶりよ」と笑い、キスしてと願い、息絶える。二人の関係が垣間見えて、微笑ましく、そして悲しい。すごくいい場面だったなあ(↓)。