眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

相棒13 第12話「学び舎」

公園でゴミを散乱させ騒ぐ若者たち。その傍らに横たわる男の死体。ホームレスと思われたその男は、共和堂大学の生物学教授だった。殺害されていた。調べが進むうち、教授の不可解な行動が浮かび上がる。貴重な初版本などを借りてくるのに読んでいる形跡はなし、公園でのフィールドワーク中に知り合ったホームレスの青年や、明治文学を学ぶ学生(早織)との交流。そして「図書館で大発見をした」「知識の流出」「みちしるべ」…といった発言。これらは何を意味するのか、そして教授を殺害した犯人とは。
と言った話。こんな遠回りをせず、直接言ってくれたらいいのに…と思うが、この少々偏屈な教授は、そんなやり方は好まなかったのだろう。学ぶという行為は、人から強制されてやるのではなく、あくまでも、自らが主体とならなければならない。取付かれたように、その世界に自ら踏み入らなければならない。そして大学とはそのための場でなければならない…。2018年問題を物語の中心に据え、知識を鍛え、蓄える場としての大学がその存在を奪われようとしていることへの危機感を訴える。しかも国の方針としては、国公立大学からは文学部をなくす、などという話しも出ている。さらには、財務省が教員を14000人削減すると要求したり。まともな教育など受けられなくなるのではないかという、恐怖と怒りが、この話の背景にはある。
ミステリ的には、道標とは、何なのかというところが白眉。そういう道標か…。大変美しい。遠回りなことすらも、美しいということなのかもしれない。
それにしても、「月が綺麗ですね」という夏目漱石の発言。創作と言われるこのエピソードが、実は本当にあったのではないかとする部分は、文学を愛する人への語りかけのようだった。こういう夢を共有出来るかどうかで、今回のエピソードへの好き嫌いは分かれるのではないか、と思う。
脚本・藤井清美。監督は橋本一