眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「白雪姫と鏡の女王」 感想

〈あらすじ〉「白雪姫」参照。

オープニングの、妃が実権を握るまで描いたモデルアニメ風のCG?場面が、如何にも御伽話な風でよい。本題に入ってからの、リリー・コリンズの眉毛には驚かされるが、次第にこれが気にならなくなるどころか、むしろそこがキュートと思えてくるのは、映画のマジックか、単なる慣れか。

妃が狂言回しとなって映画は進んで行くが、徹底してそこにこだわっているわけでもないようで、妃の話しも白雪姫の話しも、極端にどちらかに振れることなく同じような配分で進んで行く。最初に王子を襲う小人たちが、そのあとで白雪姫をまもる七人になる。足に竹馬を装着して巨人にみせかけるというのも面白い。彼らは妃によって虐げられ、人々から村を追われ、真っ当な仕事を失ったために盗賊になった、という経緯がある。虐げられた者たちが、純粋過ぎる白雪姫と出会うことで変化していくのも見どころ。

お金はかかっているのだろうが、ゴテゴテはしておらず、比較的シンプルに作られている印象。セットも空間を広く取ってあり、しかし装飾過剰に埋め尽くしていないので、そこがシンプルにみえる理由かもしれない。石岡瑛子による衣装はかなり小さな役まで全部で300着ほどが手作業で作られたということで、実物による温かみというのも少なからず映画の印象に関係しているかもしれない。物語自体もシンプルであり、あまり趣向を盛っていないのも好印象。げらげらと笑うのではなく、くすくすという感じの笑いに抑えているのもいい。タ―セム作品は「ザ・セル」にしても「落下の王国」にしても、物語自体は非常に控えめで、ビジュアル面に力を入れる傾向が強いが今作もその例に漏れず、ビジュアルスペクタクルとしての味わいこそが主眼なのだろう。

すごく可愛らしい映画なのだが、ラストに至って、毒りんごを食べさせようする妃に、お年寄りからどうぞ、と逆に食べさせようとする白雪姫に、大人の女の狡猾さが覗き見られて、ちょっと怖い。リリーを可愛いと思えるかどうかで、映画の面白さはかなり変化すると思う。