安楽椅子探偵 ON STAGE 出題編 感想
いきなり余談になるのだが。昨年末に放送されたNHK「謎解きLIVE/CATSと聖夜の殺人者」が、ドラマの放送時間1時間内に回答しなければならないというタイトな仕様へ変更となったことに不満を抱いた視聴者は多かったと思うのだ。以前は、翌日に解答編が用意されていて、まる一日あれやこれやと考えるのが愉しかったのに、NHKはその愉しみをあっさりと奪ってしまった。放送頻度を上げるための新たなパイロット版という意味合いがあったようなのだが、事を性急に進めることとは無縁な、じっくり推理するというところにこそ愉しみがあるということを判っていない。このパイロット版の受けが悪ければ次回はない、ということなのかもしれない。無くなるよりは、残せるものなら残したい、ということなのだろうが。それとも今の視聴者の大半は、一日じっくり考えるという愉しさよりも、早く答えを知る即効性の方に愉しさを感じているのだろうか。ドラマ自体は、小粒なネタながらもなるほどなるほど、と愉しめただけに、どうにも居心地の悪い思いをした。
という不満がまだ新しいところに、「安楽椅子探偵」の新作だというので喜びもひとしお。「綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状8」。ということは8作目。それはいいとして、前回の「安楽椅子探偵と忘却の岬」から8年ぶりの新作ということに驚愕。そんなに経っていたとは思いもよらず…。
さて、それでは今回の犯人は誰なのか。千差万別の回答が寄せられているはずだが、番組宛の回答は500字以内という制限がある。わたしも以下のようにまとめて投稿してみた。
もしも、本当に着登板を裏返して、場内に一晩隠れることでペンキをかけたのなら、これはもう誰にでも出来ることである。アリバイだって、ドラマ上では完全に確定しているわけではないし。15日午後3時の撲殺だって、誰にでも出来る。ただ、4時半ころに笛美が事務所に行くことを知っている人物は限られていて、これは劇団の中崎安夫を除く全員。もちろん、舞台袖で外部スタッフが聞いていたという可能性もあるし、これも特定はしづらい。なんとか見つけたそれらしいところは、コードレス掃除機が千秋楽の午前中に届くことを知っていたのは、DMを送るための作業をしている場にいた、笛美、天王寺、駒川、平野、守口、長田の6人だという点。ということは、この6人の誰かが犯人なら、急いでネックレスを回収するときにコードレス掃除機を使ったのではないかと想像出来る。わざわざ時計のプラグを外して古い掃除機を使ったのは、それを知らなかったから、というわけである。となると、殺害された中崎楽太、安夫を除けば、残りは、緑橋、江坂、田辺、金山、黒川、植木の6人。緑橋の龍角散は、ネックレスを隠すためのレッドへリングに相当すると判断して除外、華奢な江坂が、楽太を殴り殺し、ロッカーに放り込むようなことは出来ないと考えれば残りは4人。劇団事務所に入るための合鍵の場所は、劇団員は皆知っていたということなので、そうなると消去法で行けば、田辺が残るのである。もちろん、外部スタッフだって、劇団員の誰かと親しければその置き場所を知っていた可能性はあるし、コードレス掃除機だって「千秋楽に届くことなんて覚えとらんわ!」とか「あとで聞いた」とか、解答編のやり取りの中で、「プッ、お前、そこに引っかかったの?」とバカにされる可能性もあり…。あ、もしかして、資料室での楽太の殺害は、本来予定しない突発的なものだった、という一言を入れた方が良かったのかな。犯人の筋書では、楽太に嫉妬した安夫が、舞台上で楽太を毒針によって殺害。その後安夫がラニシンを使って自殺しているのが資料室で発見される…というものだったのではあるまいか。でもこれは、ドラマ上からは、想像は出来るけれど、推理と言えるものではないからな。解答としては点数にはならないだろう、仮に当たっていたとしても。
わざとあいまいになっているところがあちこちにあって、特定は本当に難しい…。が、毎回、限りなく低いパーセンテージでありながらも正答率の高い人がいるのだから、これで答えを導き出す人は今回もいるのだろう。綾辻行人によれば、「今回はそれほどでもない」くらいの難易度らしいので、正解者は多いのかもしれないが…。やはり難問である。恥をさらしただけかもしれない…。だが、これだけ愉しませてくれるドラマもそうそうないのも事実。結果はどうあれ、最高の遊びであった。あとは、解決編の放送(13日(金)深夜1:34〜)を待つのみ!
追記:解答編感想はこちら。