眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「そして誰もいなくなった」第一夜 感想

監督/和泉聖治

八丈島沖に浮かぶ兵隊島。この島のホテルに、オーナーからの招待を受けた10人がやってくる。なごやかな雰囲気の中、突然室内に響く何者かの声。その声は、ここにいる10人はかつて人を殺した者たちであると暴露する。そして招待客は、一人また一人と殺されていく。元のオーナーが戯れに残した、詩の通りに…。
アガサ・クリスティの代表作のドラマ化。なんで今更またこんな有名作品(多くの人が、犯人が誰か知っているであろう作品なのに)を…と思ったのだが(松本清張の小説が何度もリメイクされるような感じで)、なんと日本では、初映像化だという。それは意外だった。ということは、この第一夜をみて、誰が犯人なんだろう?とワクワクしている御仁がいるということ…。なんという幸福なことだろう(皮肉ではありません)。意外な結末に驚いて頂きたい。とは思うものの、この作品の結末に、驚愕するほどのインパクトが今もあるかどうか…は、微妙かも。

実を言えば、原作は未読。映画化作品も、ルネ・クレール版と、ピーター・コリンソン版の2作しか見たことはない。なので、今回のドラマと比較するのは、原作ではなくて映画の方ということになる。映画では(原作でも)、マザーグースのような歌の内容と同じように人が殺されていく。今回は、元のホテルオーナー(だったと思う)が書いた詩がそれに相当しており、10人のインディアンではなくて、10人の兵隊となっている。ということで、兵隊さんの人形が登場。一人死ぬ度にひとつ人形が消えていくのだが、面白いのは、一人では動かせないようなケースに入っているところ。こんな趣向、映画にもあったかな?どうやって人形を取り出しているのか?物語の結末は知っていても、これは判らない。どうなってるのか愉しみ。また映画化作品は、小説ではなく戯曲の結末を採用していることも有名な話だが、そのためもあってか警察は介入してこない。しかし今回は、冒頭から島に向かう警察の場面から始まっており、第二夜では警察の捜査が中心になりそう。ということは小説版に準拠した内容になっているということなのか。が、原作では結局、警察は自力で真相に辿り着けないが、ドラマ版ではかなり個性の強そうな刑事が乗り込んでくるようである。天才的なひらめきと推理で事件を解決に導くのかも…。そして結末は、小説版、戯曲版、どちらになっているのか。もしかして両方のハイブリッドか。あるいはまったく別の結末が…というのも、怖いもの見たさで期待したいが(脚本は大ベテランの長坂秀佳。かつて異常なほどに酷評されたとはいえ、江戸川乱歩賞受賞作家でもある)、クリスティ財団はそれを認めないだろうからな…。

それにしても出演者が凄い。豪華、という点でもだが、それ以上に、おみやさん(渡瀬恒彦)、赤かぶ検事(橋爪功)、山田奈緒子または社課長(仲間由紀恵)といったテレ朝系を中心に、室井管理官(柳葉敏郎)、神の舌を持つ男(向井理)と名刑事、名検事、迷探偵たちが揃い踏み。津川雅彦は、「相棒」の準レギュラーだった瀬戸内米蔵が出所してきたようなキャラクターだった。もちろん別人ではあるけれど、秘書が巻き込まれたテロはエルドビアだった、と言い出したから驚いたよ。エルドビアは「相棒」ではお馴染みの架空の国なのだ。大地真央余貴美子も、本当は名取裕子沢口靖子だったのではないかと想像したくなる。おまけに捜査をする癖の強そうな刑事は、どうも杉下右京あたりをイメージしていそうだが、演じる沢村一樹浅見光彦だし、ナレーションは石坂浩二!映画版の浅見光彦の兄、「相棒」では甲斐峯秋、そして何よりも金田一耕助!加えて藤真利子は、某サスペンス劇場(火サスだろうか)で最多犯人役記録を持つという。國村隼は、特にこれ、というのはないように思うけれど、刑事役は多いだろうし。実際、ここで演じているのは元刑事だ。徹底したキャスティングにたまげますね。

監督は、和泉聖治。「相棒15」には、結局一本も登板しないままで、もしかして体調不良かと心配していたがそうではなかったようだ。「相棒」は、橋本一がメイン監督になったようだが、意味不明のスローモーションに困惑させられることが何度もあった。それに比べると和泉聖治のスローモーションは、どうしてそう撮っているのか意味が判るので、ほっとする。正攻法なドラマ運びも、安心してみていられる。第二夜にも期待したい。

放送日/2017.3.25(土)/テレビ朝日 午後9:00〜/