眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ゲームブック「人狼村からの脱出」 感想


ウクメル村にかつて実在した巫女、その素性と村の歴史を調べていた考古学者。その過程で彼は、巫女の残した予言を発見。そこには、人狼による災いが起きると記されていた。なんとか被害が出る前に食い止めたいと願った学者は、探偵に手紙を書く。依頼を受けた探偵は、馬車を走らせ、村にやってくる…。
という冒頭部を受けて、ゲームが始まる。探偵(=読者=プレイヤー)がなすべきことは、村人の誰が人狼なのかを特定すること。また村では、謎の怪人による盗難事件も発生しており、こちらの調査も依頼されてしまう。果たして探偵は、事件を解決に導けるだろうか。

昔話
振り返ってみれば、今から30年位前にゲームブックが流行したことがある。RPGものとして名高い「火吹山の魔法使い」がその第1号であり、かつ名作とも言われているが、あの頃、その手の剣と魔法のゲームブックがいろいろと出版されていた。また、そのちょっと前くらいだろうか、「マイアミ沖殺人事件」などの、証拠や書類を実際に手にして、事件を推理するタイプのゲームブックもあった。手間のかかった本であり、価格もそれなりにしたけれど、当時結構評判になったものである。

それから幾星霜…。世に、リアル脱出ゲームという面白ジャンルが誕生し、定着する中で、それを主宰する団体がゲームブックという形で楽しんでもらおうと考えるのも時間の問題であった、というものであろう。といっても、この本自体はとっくの昔に出版されていて、初版の奥付は2012年5月となっているから、ゆうに5年になろうとしている。で、その存在を知ったのはしばらく経ってから。日記によれば、実際に購入したのは2013年の3月2日(土)のことらしい(因みにその日、「横道世之介」と「ジャッジ・ドレッド」を見ている。「横道世之介」は前売り券を買ったのだが、そのとき特典として、手ぬぐいがついてきた。これは今も、風呂場で使っています。意外と丈夫)。その本を、5年の時を経て挑戦し、クリアしたことをここに報告するものである。

感想
素直に、面白かった。実を言えば、最初はそれほど乗り気にはなれず、ふんふん、という軽い気持ちで取り組んでいた。簡単に解けるとは思ってはいないけれど、あまり本気で読む気もない、というか。失礼な話である。しかし、である…。あるメッセージを発見するくだりがあって、それを読み解かねば次へ進めないという局面が、かなり早い段階でやってくる。「バカな、まだ序盤なのに、そんなに難しいはずはない…」。が、考えば考えるほど、悪いスパイラルに入ってしまい、身動きが取れなくなってしまった。もがいていると、ふとあることに気付いて(遅すぎる)、途端に天啓を受けたかのように謎が解けたのだが、このときハマってしまいました。あとはもうあれよあれよという勢いで。随所に出てくるゲームは、一見意味が判らない。こうか?それともこうか?とあれこれと試していくことになるが、これはまあ一種の頭の体操ですな(言い方が古い)。ここも愉しめるのだが、何よりも「ああ、こういうことをやるのか、この本は!」という、意表を突く感じが大変面白かった。解き明かしたときの、スカッとする解放感がたまらない。判ってみれば、単純なことだったりするのだが、悩んでいるときには落丁じゃないのか?などと思ったりするんですよ。重要なヒントが印刷されてないんじゃないの、とか。

事件解決のためには、本だけでは終わらないというのもよかった。公式サイトにアクセスしないと結末が判らないのだが、読んでる途中、何かの拍子で、偶然犯人が判ったりするとがっかりしますからな。安心してプレイ出来る。結局、夜遅くまで寝る間を惜しんでやって、一週間ほどでクリア。これは楽しめました。他にも色々と出ているようなので、じわじわとやっていきたいと思います。スマホ版もあるようだが、ノートを広げて書き込んで、という手間のかかるゲームブック版の方が、プレイ感が濃くて好きですな。