眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「福岡恋愛白書12 センセイとワタシ」 感想

監督/小川弾

2017年3月24日に九州朝日放送で放映されたドラマが、ABC朝日放送でも放映されました。以下、ざっと感想を。

朝倉の風景で始まるが、朝倉は、先日の豪雨災害が酷かったところなので、今はどうなっているだろうと少しドキリとする。

あらすじ

福岡県朝倉市で、あさくらいふというタウン誌で編集業務に携わっている吉瀬瑞季(桜庭ななみ)。合コンに行った帰り道、瑞季は高校時代の先生と再会する。生活指導の教師で、ひとりで友達のいない瑞季を無理矢理生徒会に引き入れた井手(桐山漣)は、今も不登校の生徒に学校に来いと声をかけている。変わらぬ先生の姿に、かつての恋心を刺激されて、瑞季は先生に頻繁に会いに行くようになる。しかし先生には既に美人の恋人(早瀬英里奈)がいて…という展開。

感想
瑞季は、元々性格も内気で、見た目も地味で、友達もおらず、ひとりで漫画を描いて喜んでいるような生徒だったことも描かれているが、その漫画を生徒会新聞に描いたことで、皆から称賛されて人望を得ることになるというのは、なかなかに微笑ましい。つまり、先生に惹かれたのは、自分の人生を開いてくれた恩人だから、という部分も大きいというわけである。おばあちゃんがおじいちゃんと一緒になった理由が、「相手をしあわせにしたい」という思いからだったと聞いたこともあり、ななみは、自分に出来ることをしようとする。それが、聞き分けのない不登校の生徒(佐久間悠)に、あんなに生徒想いの先生はいないと説教をしに行くことであった。大変、情熱的ではある(無謀でもある)。ドラマ自体は、シリアスというほど重い内容ではなく、元々コメディタッチではあるものの、それにしても、この生徒とのやりとりは突然その色が強まるので、少々戸惑ってしまった。そのやりとりは微笑ましく暖かく雰囲気はよろしいのだが、恋する気持ちの本気度がゆるい方向に流れてしまった感じがして惜しい気もする。あえて気を抜いた感じの場面でもあるのだろうが、不登校少年の葛藤が、少々簡単に済まされてしまったなという印象で、ちょっと安易な方に行ったな、という感じもしないでもない(脚本は山岡潤平)。

面白かったのは、結構残酷な一面もある内容でもあることで、瑞季のことが好きな合コンで知り合った銀行員に対する扱いはなかなかに非道であるし(デート中に先生と彼女がやってきて瑞季は姿を隠すのだが、そのときの気持ちを「こんなところみられて最悪」というのだ。しかも、失恋したと知った彼が話している間に瑞季はさっさとその場からいなくなってしまう)、最終的には、先生を彼女から奪ってしまうのだから。ほのぼのとしたタッチでごまかされてしまうが、見方次第ではなかなかにどす黒いものを感じさせる。まあそんな見方は普通しないけれど。

瑞季が、今も漫画を描いているというところが、あまりドラマに生かされていないのが勿体ない。無論、あの頃の思いが今も継続中、ということのために出てきた部分なのは承知のうえで、もう少し踏み込んで頂きたかった。朝倉や秋月の風景は、よいポジションから撮影されていることもあるだろうが、大変美しく、観光ドラマとしての役割も充分に果たしている。一面のすすき(?)が広がる空間なども、実際に観光地としてあるのかどうかはわからないが、静けさをたたえた描写の美しさと相まってどこか神秘的に見えるのもとてもよかった(撮影は四宮秀俊。照明の宮永アグルとは他でも一緒に仕事している)。

桜庭ななみは、ここでも大変よろしかった。無邪気な面をみせるところは可愛らしく、まくしたてるように話すところには、思い込みの強いところも感じさせつつ、二人でデートする場面では、彼女の素がみえるような表情もあり、ファンとしては大満足の内容であったろうと想像される。桐山漣ファンにとっても、お愉しみのひと時だったのではなかろうか。「貴族探偵」の最終回で、大財閥の偉そうな御曹司を嫌味に演じていたのを、前のシーズンでみたところ。「仮面ライダーW」が復活するのではという噂もある中で、いよいよ風都の風は、桐山漣に向かって吹き始めたのかもしれない…などと思いながら。

しかし年の差どれくらいの恋愛なのか。10歳くらいかな。はっきりと年齢は言ってなかったと思うが、瑞季が大学卒業して、地元に帰って就職して、しかも仕事をまかされているとなると、今は25、6歳といったところだろうか。となると井手は35、6歳くらいか。まあアリか。が、ラストで、子どもが出来ているのはサプライズで、またえらい時間経っとるな!と。もしかすると、それなら現在30と40くらいの年齢になっているのかも。足掛け15年くらいに渡る話になると思うとびっくりする。そして子ども扱いに慣れてない感じの、主役二人がまた微笑ましいのだった。

銀行員役の福山翔太を主役に、オフィシャルパートナードラマ(要するにCM)としてスピンオフが作られており、彼が救われそうな感じの内容にホッとします。

放送日:2017年7月7日(金)26:39〜27:39/ABC朝日放送