眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「デッドストック 未知への挑戦」第1話 感想

あらすじ
テレビ東京の新人AD常田大陸は、六本木ではなく虎ノ門へと配属される。内容不明のビデオテープが、旧社屋にまだ大量に残されており、中身を確認した後、残すかどうか判断するという仕事だった。未確認素材センターと称された部署には、他に二階堂早織と佐山暁の二人。早速、得体の知れないテープの再生が始まるが…。

怪しげなトンネルでの怪奇現象の取材テープには、ひとりの女性レポーターの姿。「このトンネルではクラクションを3回鳴らしてはいけないと言われています」という彼女だったが、その、してはいけないことを取材陣はやってしまった。結果、レポーターの女性は失神状態で発見される。佐山は「なるほどそういうことか」とつぶやく。そのレポーターは松本志保といい、少し売れ出していたところで突然体調を崩し、その後自殺しているというのだ。テープには車の後部座席から出現する何者かの姿が一瞬見える映像が残されており、二階堂はこれをドキュメントの体で放送したいと言い出す…。

感想
これは予想外に、この夏の深夜を彩る良いホラードラマ。素晴らしい時間になりそうな予感がする。

まず、テレビ東京という実在するテレビ局を堂々と登場させる面白さがある。しかも自虐的な発言がぽろぽろと出るのが笑わせてくれるが(「だってテレ東だよ」的発言)、そこにこんな不気味な内容不明のビデオテープも、テレビ東京ならあるかもしれない…という気にさせるところもよい。これが他の局ではうまく出ないニュアンスだろう。出来るのNHKくらいだろうけれど、あそこは、こんな風なドラマは作れない。頑張っても「怪異TV」にしかならない。無論、あれはあれで面白かったのだが。

内容不明のビデオテープというのも、うまい。特に若い世代の人にとっては、ビデオテープは古いものであると同時に、自分たちが知らないものであって、よく判らないものであるだろうということ。我々にとっても、あの押し入れの隅に残っているビデオテープに何が録画されているのか…というのは正直、不穏な気配を感じるもので、当然そこには「リング」の記憶も重ねられるのだ。忘れられたメディアの奥に、忘れられたものが映っている…という想像の恐ろしさ。

さらにビデオテープの粗い映像である。確かに何かが映っているようだが、それが何かはっきりしない。そのぼんやり加減の恐ろしさ。あの頃は、まだ闇が存在していたのかもしれないな、と思わせる。再現されるテープ内映像は、実際にビデオで撮影されているのか、それともそれらしく見せているのかよく判らないほどに、ビデオっぽい。

トンネル内で何があったかを目撃した当時のADが、今は廃屋で暮らしている。彼はあれ以来、何かに見られていると言って半狂乱になるのだが、大陸が廻していたカメラには、ドアの向こうに不気味な人の姿が映っている。包帯姿の女と思われるそのあいまいな何かは、そこで何かをするだけではない、ただそこにいるだけ。しかし怖い。

そして怪談テイスト満点なラスト。先のADがなぜか大陸の前に現れる。壁に向いてこちらを見ないのが不気味。大陸が二階堂と佐山を連れて来ると、そこには姿がなく、連絡を取ってみることになる。電話はかかるのだが、相手は警察官で「亡くなっています。自殺です」という言葉…。まあここは正統派な趣。締める所は締めるという感じ。ただ彼が言った「今ならまだ戻れる」だかの言葉の意味は、判らないままである。大陸と二階堂は、謎の包帯女を呼び出して、それっきりになっている。それへの対処は何もしないままの第1話。呪いが今もそこにあるのではなかろうか…と嫌な想像をさせる。それに気になるのは「未知への挑戦」というサブタイトルである。どういう意味なのだろうか。それもおいおいわかってくるということか…。

第1話の脚本は、加藤淳也と三宅隆太。この人たち以外に、ホラーものの脚本を書く人がいないのでは?と思うくらいに、お馴染みである。第1話の監督は権野元。初めて見る名前?と思って検索すると「相棒15」に監督作があると知る。2本撮っているが、そのうちの1本が「フェイク」だった。安達祐実がゲスト主役だったが、なるほどあれを撮った人ならば、ある意味ホラー的なものもうまく撮れるかもしれない。オファーは偶然だろうが、偶然にも意味があるというものである。

録画を消すのが惜しい。それくらい気に入りました。この気持ちが最後まで持続すればうれしい。