眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「デッドストック 未知への挑戦」第4話 感想

あらすじ
ビデオテープ映像。こっくりさんをしている女子学生たち。そのうちのひとりが急に立ち上がり、教室内で右往左往したあげく、窓から身を乗り出し飛び降りてしまう。

大陸は、次の取材に、こっくりさんはどうかと早織に誘いをかけてみるが、彼女の反応は鈍い。実は早織には苦い過去があった。小学生の頃、クラスで孤立している少女がいた。少女の名は奈津美といい、早織はひょんなことから彼女とこっくりさんをして遊ぶようになる。おそろいのネックレスをするくらいに仲良くなったが、二人のことは誰にも秘密だった。ある日、いつものように体育倉庫でこっくりさんに興じていると、早織の友人たちがやってきて、面白半分に二人の邪魔をする。こっくりさんをバカにされ、早織にも裏切られたと思った奈津美は、翌日から学校に来なくなった…。その話をきいた大陸は、奈津美さんに会いに行きましょうと早織に言う。あれ以来、奈津美は部屋に引きこもったままだった。早織は、こっくりさんが未だに奈津美に取り憑いたままだと知る…。

感想
大陸の、未確認素材テープに対する考え方が、よく判らないことになっている。ここでは、女子学生が窓から飛び降りるという衝撃映像が映っているのだが、何階かは判らないものの、周囲で悲鳴があがるくらいだから、飛び降りたら死ぬくらいの高さと思われる。もしかしたら、映っていない部分では、女子学生は死んでいるのかもしれないのだ。にもかかわらず、大陸はあまりそこに関心はなく、無邪気に「こっくりさんはどうですか」と早織に話しかけている。得体の知れない心霊現象めいたものにこそ、インチキが混じる可能性があるのに、そちらには心底ビビりながら、人が飛び降りるというごく身近な恐怖の方にはまるで関心がない様子。しばらくこの仕事をやるうちに慣れて、感覚が麻痺しはじめているのかもしれないが、こういう描き方をされると少々戸惑う。

また、今回の話では、冒頭のビデオテープは全く意味のないものになっている。前回もそうだった、とも言えるけれども、そこに映っていた怪異を調べにいく、という話にはなっていない。作り手としては、そこに縛られるつもりはないということなのだろう。が、よく判らないものが映り込んでいるテープ、というところに、このドラマの面白さはあると思うのだが、それを4回目でもうやめてしまうのはもったいない気がしてならない。お話には色んなバリエーションがあるんで、ということなのだろうが…。

今回も、怖い話にはなっていない。子どものころの傷を今も引きずっている早織の心情がメイン。こっくりさんらしきものが奈津美に巣食っているらしい怪異は、ちゃんと描かれているものの、恐怖というほどのものを憶えないのは、心情の方に話を振ったためだろうか。こっくりさんが去ったあとの奈津美は、小学生の頃にまで心理が退行しており、早織が誰かも気付かない。ただ、早織のネックレスをみて「わたしも同じのを持ってる。友達とおそろいの…」と言うのだ。奈津美を傷つけたけれど、彼女の中では早織は今も友達のままだったのだ、というのが救いにもなっているのだが、しかし冷静に考えれば、大人の体で心は子どものままというのは、なんとも残酷な結末とも言える。また、こっくりさんというのも本当のところはどうなのか判らず、奈津美が心に抱え込んでしまった傷が、引きこもりの原因とも取れるように描かれている。

一番恐ろしかったのは、奈津美の母親だ。演じているのは武藤令子という女優さんだが、顔もはっきり判らないくらい。家の中はゴミだらけの、いわゆるゴミ屋敷状態である。二階へ上がっていく早織と大陸を下から見ている姿など、出番は少しだが常軌を逸している感じがあった。しかし、子どものことを気にかけるあまり、周りへの関心が失せているのかもしれないし、そう考えるととても悲しい姿に見えてくる。精神的に疲れ果てた女性なのかもしれない。もしかすると彼女の荒れた精神状態が、奈津美を引きこもりに追い込んだのかもしれないとも思ったけれど、訪ねて来た二人をあっさりと家にあげたことを考えるとそうではないのだろう。加藤、三宅の二人の脚本家は、社会派というと大げさだが、現代社会の日常にある歪を描こうとする傾向があるので、今回のこの母親の描写にも、込められた思いがあるはずである。

毎回ごとに、そんなテーマを盛り込んでくれるのはかまわないのだが、ドラマ全体を俯瞰して見た場合どうなのかなと、気になっていることがある。大陸を主人公と思っていたが、ここまでのところ、彼は傍観者に過ぎない。むしろ早織の方が、話を動かす人物であり、中心になっている。これは意図的なことだろうとは思うのだが…。ミステリアスに見せようとするがあまり、本来の主人公が描けないというジレンマめいたものに陥ってはいないのだろうか、という不安である。気のせいであったほしいが…。
今回のラストは、佐山が、病室で眠る人物をじっと見つめる場面になっている。彼が隠しているものは何か。主役の三人がどうして未確認素材の確認部署にいるのか、ということが結びつくような、そんな展開を期待しています。

子ども時代の早織を篠川桃音、奈津美を田牧そらが演じている。篠川さんは、背が高い(のだと思う)のを気にしているのか、少し猫背気味。ちょっとシャイな感じがして役柄にはあっていた。田牧さんは、「ナカバヤシ」のCMで目にしていたが、成長していて少し大人っぽくなってきている。ふたりとも良い芝居をしているので、女優として成功してほしいなと思います。大人の奈津美は、趣里。ノーメイクのような顔での出演なので、ますます童顔具合が際立つ。純粋さのみで成立しているような、憑き物が落ちたあとの奈津美の表情、頼りない体の動きが切なかった。

次は、怖いの頼むよ。