眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「わたしのハワイの歩きかた」 感想

簡単な感想
一種の自分探しの映画、恋人探しの映画、というとよくある話に収まってしまうが、脚本の高田亮と監督の前田弘二は、これを実に魅力的な映画に仕上げている。テンポのよい会話のセリフとやりとりの軽快さが楽しいが、もうひとつ、人物設定の微妙なところの掬い方が素晴らしく、登場人物に独特の厚みをもたらしているのがとてもよい。そこから生み出される、失恋と恋愛と、仕事における自己の存在などの諸々が、笑いと共に描かれていく。

出資先を求めて必死になる瀬戸康史の様子を見ながら、そこに自分の姿を重ねてしまう辺りの自虐的な感覚、それをうまく吐露出来ずに相手を罵倒する形になってしまう榮倉奈々の痛々しさは、居心地の悪い感じがよく出ていて印象に残る。都合3人の男に振り回される榮倉奈々の自然体な芝居は、作品によく合い、ハワイという土地の開放感も加わり、実に魅力的だった。友人となる高梨臨も見かけと違う性格のギャップが可笑しくも微笑ましかったが、彼女にしつこくつきまとう現地在住の日本人の本間ちゃんを演じる宇野祥平が、おそらく宇野祥平史上いちばん可愛い宇野祥平だったのではないかと、それが衝撃的でもあった。スピンオフで、この二人の生活を見たいほど。

絵にかいたようなラブコメ映画みたいで食指はまるで動かなかったが、食わず嫌いはいけないな、ちゃんと見てみないと、良しあしなんてわからんな、としみじみと反省してしまうほど面白かった。これが東映配給(製作にも噛んでいるが)とは思ってもみなかった。東映の色からすれば、もっと泥臭い映画になりそうなのに、まるでそうなっていないことの驚きがある。