眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

眠狂四郎 魔性剣 ★★★

監督 安田公義/1965/大映 

「私を買ってください」と声をかけてきた女が、武家の者と気付いた狂四郎。が、訳ありで身をやつした現状を聞き「そんな女を抱くつもりはない」(大意)と告げて去り、女は自害してしまう。不用意な言葉が彼女を追いつめたことに後悔する狂四郎は、女が岩代藩の世継ぎ騒動に関わっていることを知る。

「魔性剣」は11:48から。

世継ぎである鶴松を探して追手がかかる話とは別に、兄の仇として狂四郎を付け狙うおりんの話も絡む。彼女の命を受けた刺客たちが殺しを仕掛けるのも面白く(蛇、爆弾、尼僧の色仕掛け)、転びバテレンによる黒ミサという見せ場もあり。燭台や梁で大事なところを隠すカメラアングルが懐かしくもいい感じ。敵の侍を斬る主観カットで、血がビシャッと撥ねるのも残酷でいい。更に狂四郎に真っ向から勝負を挑む岩代藩の武士も登場。狂四郎と鶴松に次第に心が通い合い、「ひとり狼」を思い出させるような「鶴松見ておけ、これが武士というものの姿だ、この殺し合いが」という台詞も決まって、これで75分という恐るべきプログラムピクチャー。狂四郎の行くところ、敵も味方も関係なく、関りになると死を覚悟せねばならぬほどに死屍累々。死をまとった宿命ゆえに狂四郎の虚無は暗く輝く。