眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

モスラ ★★★★

監督 本多猪四郎/1961/東宝/

第二玄洋丸が嵐で遭難。水爆実験のため死の島となったインファント島に漂着し、その後救助された船員たちは、しかし被爆していなかった。ロリシカ国からの調査団の隊長ネルソンは、島で発見した妖精をさらい見世物にして大儲けする。が、妖精を取り戻すために、島の守り神モスラが東京に襲来する。

昭和36年東京オリンピックを3年後に控え、高度経済成長で豊かになっていくエネルギッシュな時代の一大娯楽映画。東宝特撮映画史上でも、ここまで巨大で盛大な都市ミニチュアはないのではないかと思わせるスケール。特にミニチュアの戦車やジープやバイクが走り回り、実景と組み合わされる辺りは、何度見てもため息が出る素晴らしさ。モスラの幼虫が東京を破壊する凄まじい見せ場に、食いついたら離さないすっぽんの善ちゃんのキャラクターを始め、東宝映画らしい陽性なドラマ作り、ザ・ピーナッツによる歌謡ショーと、娯楽映画の粋を詰め込んだような楽しさ。その一方、ロリシカ国が、ろくな調査もせずにインファント島を無人島と決めつけ水爆実験を行ったということに慄然。超大国に対する不信がじわりと滲むところに、作り手の複雑な胸中が伺える。