眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ジェーン・ドウの解剖 ★★★

監督 アンドレ・ウーヴレダル/2016/米 

凄惨な殺人現場となった家の地下室から発見された身元不明の女性の遺体。オルディン親子が営む葬儀社に遺体は運ばれ、解剖されることに。外見的には傷が一切ないにもかかわらず、体内には常識では考えられない暴行の痕跡。どうすればこんなことが可能なのか。調べを進めるうちに、深夜の葬儀社は不吉な影に包まれていく。

次々に不可解な暴行の跡が現れてくる解剖の様子を、丁寧に見せていくという趣向が珍しい。父がまだ経験の浅い息子にあれこれと指示しながらの作業は、職人の仕事ぶりを見せる映画にもなっており、その点でも興味深い。やがてジェーン・ドウがどこからやって来たのか、という結論に「魔女」という答えが導き出されるあたりは、ミステリとホラーの融合という感じで面白いが、その後は割合オーソドックスなオカルト映画になり、好みが分れるだろう。とはいえ、父と子が善人であり、お互いを思いやっていることが描かれてドラマの厚みを増しているだけに、理不尽な呪いのもたらす結末は陰惨で非道極まりない。たまたまかかわったために巻き込まれた人たちの不幸と呪いの拡散は、「リング」や「呪怨」と似た、嫌な味わいに満ちている。