眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

海角七号 君想う、国境の南 ★★

監督 ウェイ・ダーション/2008/台湾/

夢破れて恒春に戻って来た阿嘉(アガ)。雑用ばかりやらされて不貞腐れ気味のモデル友子(日本人)。中孝介のライブの前座のオーディションで選ばれたポンコツな組み合わせなメンバーたち。当日までにまともな演奏が出来るようになるのだろうか。

そこに、戦後、台湾を離れた日本人が恋人に宛てて書いた手紙が、別軸の物語として絡む。てっきり主役二人の恋愛と過去の悲恋が重なる映画と思っていたら大間違いで、登場人物は想像以上に多く、それぞれにちゃんとドラマが用意されていて、意外やこれは群像劇といった体裁の映画であった。交通整理の警備員がルカイ族であったり、マラサン!と酒の売り込みがやたら煩い営業が客家人であったり、友子が日本人であったりと、民族や世代が入り混じる中の交流の物語である点が、日台の悲恋、統治時代への複雑な想い(郷愁も含む)といった民族の狭間の問題と重なるが、がっちりと縦横軸が噛み合った構成になっていないので、分離された二つの物語が並走しているように見える。が、ライブで共に歌われる「野ばら」(統治下で歌われていたという)には、民族を越える力がきっとあるはずという未来が託されているようで、少し感動的。