眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

泣く男 ★★★

監督 イ・ジョンボム/2014/韓国/

殺しの仕事を完遂したはいいが、幼い少女まで殺してしまったことで動揺するゴン。娘を失いながらも気丈にふるまうモギョンだが、元夫が彼女に送ったメールには、中国系組織の巨額の口座番号が記されていた。元夫はこれをロシアマフィアに売ろうとして殺されたのだ。ゴンは、組織からモギョン殺害の命令を受けるがそれを拒否し、彼女を守ろうと決意する。

中盤あたりまで、母との悲しい思い出を引きずるゴンと、娘を失ったモギョンの姿を中心にしてドラマが進む。それぞれ無残な結末を胸にして、後悔と絶望とを抱えて死を意識するぎりぎりを生きている二人を丁寧に描いている。が、サスペンスを中心とした物語自体は遅々として進まない。持って回った作りは、後半の怒涛のアクションと繊細な心理ドラマをうまく繋ぎきれず、何のための闘いなのかも見え辛くなっていく。主役二人の好演が勿体ない。が、後半のマンションでの戦闘は圧巻。ナイフを使った殺戮の凄まじさ、向かいの建物からの銃撃という距離感の取り方のうまさなど、圧倒的な迫力。クライマックスの、モギョンの勤めるビル内での戦いよりも、空間を意識させる画面設計が生きており、格段に素晴らしかった。