眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

恐怖の報酬 オリジナル完全版 ★★★

監督 ウィリアム・フリードキン/1977/アメリカ/シネマート心斎橋/

南米の某国に流れ着き、石油会社の過酷な労働で食い繋ぐ男たち。反政府ゲリラによるテロで油井に火が付き、ダイナマイトの爆風で消火することになるが、管理がいい加減だったダイナマイトからは液状化したニトロが染み出していた。少しの衝撃で爆発する爆薬を、高額な報酬で4人の男たちが運ぶことになるが…。

主役の4人がどういう人間であるかは、前半部分で描かれる。国外逃亡後は、回想もなく過去を語ることもほとんどない。その会話もほんの少しですぐに打ち切られてしまう。言葉ではなく映像で語ろうとするのは70年代映画の一つのスタイルであったことを思い出させる。よって非常に静かな印象を持つ映画となっており、ドライな空気を放つ犯罪映画っぽさが素晴らしい一方、独裁政権によって荒れた国内の描写は熱っぽく、またジャングルは湿っぽく、油田までの道のりはねちっこいほどのディテールの積み重ねで圧倒させる。緊張感が高まるのはやはり、橋を渡る場面。雨と風で揺れる橋の上をじわじわと進むトラックには、実際にそれをやっていることの説得力が、今日日の映画には真似の出来ない迫力で圧巻。個人的に驚いたのはラストシーンで、この映画のメインテーマ曲は、あいつのテーマだったのか!と思わされたのは、ちょっとした衝撃だった。死が、遂に彼を追い詰める、そういう意味だったのか。