眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

神様ゲーム/麻耶雄高(講談社)を読んだ


以下、若干のネタばれ

子供向けのミステリ叢書シリーズの一冊だが、ふんふん、と思って読み進める。猫殺しという陰惨な事件を少年たちが解決しようと奔走する話と思っていたら、思わぬ方向へ展開。読んだ人間全員がおそらく仰天すること受けあいのラスト…
ええっ!?
と言いたくなるのは間違いなかろう。あのラストの衝撃は、ミステリのどんでん返しとしての衝撃というよりも、どんなに信じられないことが起きたとしても、起きたことこそが真実、という物凄い言い切りの衝撃だ。ネットで色々意見を漁ると、ある事実一点だけが真犯人を特定する描写として挙げられているんだけど、それだけで事件の全容をまるごと納得出来るようなものではない。劇中の神様=鈴木君が下した天誅がそれなら、そうだとしか言いようがなく、作品にとっての神様である作家本人がそう描いている以上、そうなのだとしか結論づけるしかない。この信じられなくてもそれが真実、という逃げようがなく受け止めることも出来ない現実の苦さ、不条理さがこの作品の素晴らしさであり面白さ。しかしその一方で、本当に鈴木君=神様、とする考えは正しいのか?という問題も残り続ける。この顛末のどこまでを信じるのか?これは自分の信じている世界が脆くも崩壊していく絶望と恐怖、そしてあきらめについての物語だろう。真相についてああだこうだ考えるのも一興かとも思うが、それよりも脱力するほどの無常感を味わう方がいい。