眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「狼たちのノクターン」感想 1月6日(日)の日記

昨日はシネマート心斎橋にて『狼たちのノクターン』。

ニック・チョン+サイモン・ヤムで犯罪映画という人を惑わすキャスティングなのが魅力。ニックのサイコパスめいた演技はかなりレベルが高く、街中でアイス食べながら道行く露出度の高い女性の姿を目で追ってにやにや笑うとか、いきなり海に飛び込むとか、含みを持たせた笑顔の不気味さとか↑、あとソリッドすぎる肉体の描写とか、ニックが見せる狂気の狭間は一種の見せ場になっているほどなのだが、ちょっと芝居が判り易過ぎるために損をしている感じもしないではない。一方のサイモン・ヤムは重案組の刑事ではあるが別に暴走もしないし割と普通の人。だけど、未解決事件の捜査の継続を願い出て上司からはうんざりされているなど、しつこく食い下がる人ではあって、しかも妻に自殺されている。が、彼はそれを信じておらず他殺だったのではないか、と疑っている。ここ、非常に重要なように描かれているがサスペンスの要素としてはほとんど関係がない。ずっと悩み惑い続けているサイモンを、クライマックスでのニックの言葉が貫き、それによってサイモンの心に変化が訪れるので本当は重要なのだが、こんな意味深な描き方は間違っていると思う。余計な寄り道だ。

監督のロイ・チョウは『殺人犯』が話題になった人だが残念ながらそちらは見ておらず、驚天動地のオチのことも知らないのだが(いつか観る時まで楽しみに取っておく)、今回は比較的普通の犯罪映画になっている。残念なのは先般公開された『やがて哀しき復讐者』やダンテ・ラムの一連の映画のあとでなので少々分が悪いということ。とはいえ『ビースト・ストーカー』や『密告・者』の悲惨な境遇を思い出させる辛すぎる運命を背負ったニックの人生の駆け抜け方には涙を禁じ得ず、事件に巻き込まれたジャニス・マン演じる若きピアニストの心情を思えば、例によって、なんでそこまで登場人物を追いつめるかな…とがっくりとうなだれること請け合い。しかしこの作品はまだ救いがある方かな。

音楽が梅林茂で、音楽制作のスタッフは主に日本人になっている。梅林側のスタッフが参加しているのだろうか。


ブックオフにて『上空の城』(赤江瀑/角川文庫)を買う。去年の6月に亡くなっていたとは全く知らず。先日ミステリガイドみたいな本をパラパラ立ち読みしていたら皆川博子さんのインタビューが載っていて、そこに赤江さんが亡くなって、とあってびっくり。それがあったので、ブックオフの105円棚を見ているときに、背表紙が目に入った途端、手に取ってしまった。また、ちまちまと探して読んで行こう。