眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「大魔術師Xのダブル・トリック」感想 1月7日(月)の日記

土曜日に観たもう一本、『大魔術師Ⅹのダブル・トリック』の感想。

一応英語名でデレク・イーという名前があるにもかかわらず、日本ではほとんど使われることがないイー・トンシンの監督作、加えて主演がトニー・レオンラウ・チンワンと来ては、観たくないという香港映画好きがいるとは思えない布陣である。が、わくわくしながら観てみると、実に旧正月向きの映画であるなあ…と、半ば納得、半ばがっかり…というのが素直な感想であった。大陸の観客を意識して、ということもあるのだろうか、大味でゆるい。また、一体いつの映画だよ、と言いたくなるほどの古い古い笑いの取り方にも驚かされた。とはいえ、いや如何にも旧正月映画らしいじゃないか、これはこれでいいんじゃないか、とも思うのだ。スターが出ていて、適度にサスペンスがあり、皆が笑えるシーンがあって、それ以上何を望むかと。

意外だったのは、トニーとチンワン、そしてジョウ・シュン(声低い。本人の声だろうか?だったらかなりカッコいい)の三角関係の恋のさやあて映画だったことだ。知らないふりをしてやりとりする男二人の様子と、それをクールにみている女が一人。それぞれに言いたいことがあって、だけどそれをうまく伝えられない。敵対するはずの男二人にもやがて友情めいたものが生まれて来て、なんともほのぼのとした空気があって可笑しい。特にチンワンの大げさな演技がある意味痛快なのだが、「間抜けにしか見えないこの男の裏の顔が判明する中盤、」がらりと印象が変わるのがもしかしたら一番の見どころ。当然、三角関係にも微妙な変化が生じていく。作り手がやりたかったのはここなんだろうな。

彼らが戦う本当の敵が、あまり強力でもないので(チンワンの執事役のウー・ガン、日本からは澤田拳也)いまいちサスペンスが盛り上がらないし、アクションの見せ場も実はそれほどないので、クライマックスの劇場でのやりとりもずいぶんのんびりした感じになっているのも勿体ないのだが、まあそういうものだと思って観る分には愉しい映画ではある。ダニエル・ウーが最初にちょっと顔を出していたり、アレックス・フォンやツイ・ハークやヴィンセント・コクのゆるいお笑いなども微笑ましい。ラム・シュー(最初、ケント・チェンと思ってたよ)の妹役のワン・ツーウェンも可愛らしく、チンワンの第三夫人を演じたイエン・ニーのふてぶてしさも素晴らしい。総じて俳優は皆いい感じでしたよ。トニーもかっこ良かったし。

劇場が舞台となっている、ツイ・ハークが出ている、チョン・プイも出ている、黒づくめの敵がいる、恋のから騒ぎである、などなど、観ながら『北京オペラブルース』と似てるなと思った。ラストなんかそっくりですよ。びっくりした。偶然か、多少は意識したのかな。ちなみに『北京オペラブルース』のDVD、ラストの字幕がカットされている。あれがかっこ良かったのに!