眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「青の光線」をみる

第8回大阪アジアン映画祭。『青の光線』をシネヌーヴォで。
















西原孝至監督も来阪され、舞台挨拶と上映後にQ&Aコーナーもありました。話をうかがう限りでは、作品の内容や個々の描写に関して非常にシンプルに考えておられるようで、逆に言うとこちらが色々と想像し過ぎている感じもあり。『青の光線』の青は、青春の青、くらいの感じらしいのですが、それを念頭に置いてみるとまた印象が変わるかもしれない。作品としては、こじんまりとした、若者たちの閉塞した状況へのあきらめが綴られた青春模様で、停滞するような日常の中に、微かに見える希望のようなものがちらつく感じがまた切なく、悲しい。最低な形で出会った森岡龍黒川芽以が次第に打ち解けて行く様子もいい感じで、雨降る中を二人が歩いていく場面を遠くからとらえたショットなどは、おそらく本当に普通に会話して歩いているだけのようだが、街の風景に溶け込んだ自然な感じがよくて、濡れた路面もちょっと艶っぽかったりして好きな場面だったな。

全体としては小品であり、習作という感じもなきにしもあらず。台詞で説明し過ぎだったり、またその台詞がちょっと作りすぎでこなれていない感じだったり(マンガや小説の台詞のよう)する拙さもある。が、街の片隅の小さな出来事をそっと掬いあげる感覚はやさしく繊細で、それはラストシーンにも静かに寄り添う…。

15日(金)の16時半からもう一回上映がありますので、興味をもたれた方や、森岡龍黒川芽以森野あすかファンの方たちはこぞってシネヌーヴォへ。監督もまた来られるようです。公開は決まっていないらしいのだが、なんとか今回の上映がそれに結びつきますように。

追記:黒川芽以映画としてはどうなんだという声には、充分応えてくれる映画だと書いておこう。ティッシュ配りのバイトも見るからにだるい感じ、お金のためには体も売る(おっさん相手には3万円、若い人には2万円)、信じるものはお金だけ、という女性。キツイ性格、キツイ言動。その一方で妹への接し方は限りなくやさしい。森岡龍への対応も徐々に変わっていく。その中でみせる、時に憂鬱そうに、ときに気楽に笑っている、そんな黒川芽以の表情としぐさをみているだけでも、ファンには宝物と言えよう。