眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「マーサ、あるいはマーシー・メイ」をみる

シネマート心斎橋で『マーサ、あるいはマーシー・メイ』をみる。


逃げ出してきた過去が、現在をじわじわと浸食していく。境界があいまいになっていく緊張感と恐怖がひりひりと迫る。カルト集団といようと、姉といようと、ゆっくりと真綿で首を絞めるかのごとく、身の置き所、心の拠り所を無くしていくさまが恐ろしくも悲しい。抜けだせぬ絶望と焦燥。世界と剥離し続ける身の上、そんな自分への恐怖。ある種普遍的な若者の心の揺れにも置き換えられる按配も絶妙。が、まどろむような悪夢を断ち切るようなラストの唐突さが、現実に立ち返らせる。久々に、えっ?と思うラストシーンだ。

エリザベス・オルセンの無防備過ぎるエロスが、子供のような素直さと、制御出来ない心をもてあまし苦悩するさまの両方に説得力を持たせているのも素晴らしい。全体の静謐な空気や不穏な気配、微妙なバランスをとった画面内の人物配置の構図など、色んなところで非常にわたし好みの映画だった。こういう映画をみると、映画をみるのは愉しいなあと心底思いますよ。

引き続きこちらも公開。