眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『アウト・フォー・ジャスティス』をみる

1991年製作ということは、もう22年前の作品になるのかとそれに驚く。そんな映画がテレビ大阪の深夜とはいえ(おそらくテレビ東京のお昼と同様)堂々と放映されるという、商品としてまだまだ現役であることがうれしい。

セガールは刑事。が、元々は不良みたいなもので、犯罪組織とも顔なじみ、親友も組織の幹部だったりする。共に遊んだ悪友で今はヤク中の犯罪者ウィリアム・フォーサイスが、同僚刑事を殺害、セガールも組織もフォーサイスを追いかける。

監督はジョン・フリンなのできびきびとしたタッチが小気味よいのがみていて気持ちよく、お話の方もなかなか味わいがあっていい。セガールと組織の関係が、敵対するものだけではなくて、微妙に距離を保ちつつの割合友好的なもの、というのが面白い。組織幹部と昔話をする場面など、刑事とヤクザではなくて旧友同士の会話として描かれているのもいい感じ、正義の側に回った彼の心情をちゃんと語らせているのもいい。また、ほとんど気が触れた状態のフォーサイスを、それでも守ろうとする父と母(お父さんの本当のところは恐怖をおぼえている感じなのもよい)、迷惑を被ってうんざりしている弟と妹(ジーナ・ガーション)の描写も捨てがたい。ニューヨークの猥雑な部分で必死に、そして地道に生きている人々をないがしろにしない脚本はデヴィッド・リー・ヘンリーという人で、調べてみたら『ロードハウス/孤独の街』も書いている。どおりでちゃんとしたドラマになっているはずだ。

クライマックスのせまいアパート内での銃撃戦も無茶苦茶だが、セガールフォーサイスの一騎打ちもすごい。いやほとんど一方的にセガールがやってしまうんだけど、どうもほとんど吹き替えなしでやっているようにみえるフォーサイスの気合に驚かされる。たぶんほんとうに壁に向ってとんでるよね、あれ。面白かった。

ジョン・フリンはやっぱりいいねえ。信頼のおける手堅い職人監督だったけれど、意外と寡作だった人で、そこが勿体ない。もっとたくさんの映画をみたかった。晩年(遺作か)の『密告の代償』なんかも変な話だったけれど不思議な面白さがあったし、『組織』『ローリング・サンダー』『摩天楼ブルース』などは言わずもがなというやつで。またちゃんとみたい。