眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『邪 ゴースト・オーメン』をみる

脚本・監督はカイ・チーホン。『蛇姦』もこの人。

後継ぎが娘しかいなかったので婿を迎えたあるお金持ちの家、やがて家は傾き没落、イラつく夫は、召使と肺を病む妻とを激しい暴力で責め立てる…という前半部分は夫の非道な姿が素晴らしい。憎々しい。夫の暴力に耐える妻の姿もまたいじらしく昔の映画らしいメロドラマ風な味わい。そこへ昔の使用人の子どもだと名乗る女がやってきてから、恐ろしいことに…。

以下ネタばれ。反転。
ホラー…というか怪談と思っていると、犯罪スリラーであった。おどろおどろしい描写はたくさんあるが、実はちょっとしたミステリ映画でもあったのだ。人によってはしらけるところかもしれないが、個人的にはむしろ興奮したというか、やはり想像していない方向へ話がとぶと嬉しくなってしまう。幽霊が暴れまわる場面、首だけしかない姿で出てくるとか、切られた手首が動くとか、超常現象というか心霊現象的な描写は夢や妄想であり、現実に夫と愛人を追いつめる亡き妻の姿は、昼間も夜も関係なく、その場に肉体を持った存在として出現する。これがすごく変というか、幽霊をこんなふうに描くのはあまりみたことがないので、面白いなあと思っていると…というオチ。なるほど。ミステリ的には非常にフェアなのがよい。

しかし意外と真っ当な物語を逸脱するのは終盤での除霊の場面だろう。依り代の役割の女性がなんだかやたらと踊る踊る。本職はストリップダンサーとかだったのだろうか。また裸がすごくきれいなんですよダンサーさん。見えてはいけないところまで見えそうでドキドキした。どうもぼかしが入ってるぽかったけど。踊りのあとには焼いた札束(?)を体にこすりつけろなどと憑きもの落としの婆さんがいうと、ダンサーさんが、滅法色っぽい声でもだえつつ、よろよろと動くんだけど、もうカメラはおっぱいしか撮ってないからね。この終盤のいかがわしさは、なるほど香港の石井輝男だというキャッチコピーもあながち言い過ぎではないかも、と思えた。

オールセットの映画の持つ独特の空気が懐かしくも豊か、雰囲気満点のセットの作り込み(池の描写がいい。日本の怪談映画と似た趣)、夢幻的なシーンの美しさなど、加えて(終盤はあれだけど)全体はしっかりと作られたちゃんとしたドラマなのも良かった。キワモノという評判だけで期待してみたが、それだけでない映画の楽しさもある。お気に入り。

邪 ゴースト・オーメン [DVD]

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