眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『大脱出』 感想

監督はミカエル・ハフストローム

スタローンとシュワルツェネッガーの本格的な共演となると、やはり気持ちが浮き立つ。80〜90年代にかけてのアクション映画の両巨頭、どういう対決になるのかと期待は高まる(ちょっと半笑いで)。

スター映画としてはほぼ満点ではないだろうか。インテリであるという設定と、60超えても筋骨隆々たる姿という、俳優の技量、ありようを存分にみせつける所であり、昔から何も譲らない堂々としたアピールが素晴らしい。劇中、どんなに拷問をうけようと、過酷な懲罰房に入れられようとも、2、3シーンあとにはまるで嘘のように平然としている姿が凄いよ。全く憔悴しない。演技や演出が適当というよりも、スター性のなせる技、と思いたい。クライマックスでのシュワルツェネッガーの、あの目!機銃掃射!80年代がまだ終わっていないことを信じさせるに足る、拍手間違いなしのかっこよさ。作品の規模としては、実は軽量級(とはいって監獄のセットや監獄屋外のロケなどきちんとお金がかけられているのが素晴らしい)なのだが、飽きさせない展開と、2大スターのがっちりと組んだ共演とで最後まで楽しく見られる正しい娯楽映画。監督のハフストロームも、その辺のことがよくわかっているようで、「シャンハイ」のときより以上に、スターを如何によく見せるかに徹底しているようである。

(見かけによらず)頭脳派タイプの二人の男たちは、静かに状況を確認し、密かに行動して、脱獄のための隙を窺う。状況の把握によって、ここがどこであるかとか、どんな方法で脱出するかとか、だんだん詰められていく展開は面白かった。ただそうなるとサスペンス映画としてまとめたほうがいいと思うのだが、編集の乱暴さ、撮影の仕方、物語・展開の荒っぽさなど、どこをどうみてもアクション映画のそれ。アクション映画のテンポで描かれてしまっているのが裏目に出ているのではないかとは思った。アクション映画になっているのは、主演二人による呪縛のせいではないか。彼らのスター性が邪魔をした、とも思えるが。

あと、脇のキャラクターやお話にはなんとも勿体ない使い方に終わっている部分が惜しい。所長のジム・カヴィーゼルや医者のサム・ニールといった味のある俳優たちが無駄になっているのが残念。ヴィニー・ジョーンズももっと悪辣でないとな。脱出するときに最悪の壁になる最強の敵でいてくれないと。