眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『さまよう魂たち』をみる

監督はピーター・ジャクソン。1996年のアメリカ映画。

先日、ポータブルDVDプレーヤーをもらった。手近にあった中からこの作品を選んで布団に入り、使い勝手を確認する軽い気持ちで観始めたのだが、結局最後までみてしまった。初期の悪趣味な低予算映画ではなく、かといって現在の超大作映画でもない、中程度のバジェットの映画という立ち位置や、興行的にもあまり成功しなかったこともあり、ジャクソンのフィルモグラフィの中では意外と忘れられやすい映画なのではないかと思うが、抜きんでて面白いのはこの映画だろう。『ブレインデッド』も『乙女の祈り』も『ロード・オブ・ザ・リング』も好きだけれど、編愛するのは『さまよう魂たち』だ。

前半のゆるいコメディぽさが、次第にあれよあれよと変化してホラー濃度が高くなっていくスピード感がよい。ミニチュアとCGを駆使して繰り広げられる死神との対決、追跡といった場面の躍動感がよい。必要ないのに過度にグロテスクなのもよい。ゴシック風味も忘れていないのもよい。俳優もよい。特にジェフリー・コムズがくどいのがよい。後ろ暗い過去と影のあるマイケル・Jもよい。今となっては既視感がある展開かもしれないが、事の真相が明らかになり、マイケルが解決のために取る方法には、公開当時、驚き興奮したのだが、やっぱり面白いなあ。想像していない方向へ進んでいくと俄然燃える。しかもクライマックスは引っ張って引っ張って、なかなか終わらないのがスリリング。ここまで盛り上げたらそりゃ面白くもなりますよ、というくらい。おまけにちょっと感動もある。何もいうことのない、娯楽純度100%の映画だと思う。

それにしても1996年の映画だったか。DVDの頭にはピーター・ジャクソンの解説が入っているが、そこで、10周年記念盤みたいなもの、といっているから、DVDは2006年、7年くらいにでて、そこからさらに7、8年経っている。そうしてみると改めて時の流れを感じますね。公開時は梅田東映パラスで観ましたね。場内の入りはほどほど(確か初日にいった)、でも上映後の場内の反応はいまいちな感じだった。宣伝ではホラーコメディを前面に出していたので、それを目当てにした観客には不満だったんだろうと思われる。

上のポスターとデザイン的には同じだが、幽霊の扱いが全然違う。そりゃコメディだと思うわな。それもハートウォーミングな感じの。そんなこともなつかしいが、映画自体は全然死んでいない。まだみていない人には是非とも薦めたい作品ですな。