眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『KILLERS/キラーズ』をみる

監督はモー・ブラザーズ(ティモ・ジャイアント/キモ・スタンボエル)。2013年の日本=インドネシア映画。

東京の変態殺人鬼の悪しき力が、遠くジャカルタでひとりのジャーナリストの運命を変える。

北村一輝の孤独が哀れ。亡き姉のことが好きだった彼は、街中でみかけた訳あり風な姉弟に興味を引かれると、彼女の経営する花屋に行って優しく声をかけたり、自分のやっていることに影響をうけたと思しき人物が現れると、すぐにコンタクトを取り、仲間として接し始めたりする。社会的には不自由なく暮らしている様子の北村なれども、本当の心のうちを理解してくれる人間は誰もいない。彼の行動が思いの外、積極的なのは自己顕示欲が強いだけではなくて、彼の嗜好に共感してくれる誰かを欲していたからだろう。そのためには多少のお金も出すし、アドバイスもするし、遠く離れていたって気にしない。ただ、それが思い込みにすぎないところが悲劇であり、それだけに彼の抱える孤独の深さはいや増すのである。世界に自分ただ一人だと思う絶望を秘め、喜びを共有出来るかと思った人たちに裏切られれば、逆上もしよう。サイコキラーにはサイコキラーの道理があるのだ。なんとか花屋の高梨臨を説得しようとする場面の彼の表情は、あまりにも繊細で頼りなく、オカ・アンタラの前での企みに満ちた昂揚した表情は自信にあふれ、双方への愛情が溢れ出している。そこには狂気と悲しみが同居した絶望がある。一種のラブストーリーとも言える。何も救われないが…いや、あれはあれで幸せだったのかもしれないな…。

黒川芽以は、中盤に登場する銀髪の女。出番はそれほどないが、派手な格好で下品な口のきき方をする、まあ商売女ですね。なんやかやと色んな役をやってくれて、ファンとしてはなかなか頼もしいし、愉しい。派手なところから、そのあとのギャップもよかった。

一応、成人指定になっているが、暴力描写にそこまでのものがあるかというと、そうでもない。残虐描写に関してだけいうのなら、『ムカデ人間2』あたりの方がずっと酷い。