『ラッシュ/プライドと友情』をみる
クライマックスでの、ニキ・ラウダの決断がしびれる。実際の彼が、どう思ったのかは知らない。しかし映画では、無理しなくてもチャンピオンになれるという計算、命をかける無意味さなどを冷静にみた結果だけではなく、妻のことを思っての判断だ、ということが描かれている。彼は吹きつける雨の中に妻の姿をみるのだ。この辺の、事実はどうあれ、映画的にロマンティックな要素を取ったところに、娯楽映画の矜持をみる。また一方のジェームス・ハントももう今、そこを走っていない相手を前にみて走り続ける。姿なき、形なきものを追うという行為に(勿論、チャンピオンになるという目標はあれど)、見果てぬ夢を目指すロマンを感じずにはいられない。