眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『カルト』をみる

脚本・監督は白石晃士。2013年の作品。

GYAOで。

フェイクドキュメント。POV映像というのは、臨場感を与える、さも本当にあったかのようにみせるための手法として使われることが多いが、これだけ多用され、定着すると、そこにリアリティはもう存在しなくなる。白石晃士は、以前よりそのことに自覚的で、この手法を物語るための手段として使っているのが、他の凡庸なフェイクドキュメンタリストたちと違う。

みながら『クロニクル』を思い出した。POV映像を重ねていくことで、ドラマを語っていくのが似ている。どちらにも言えるのは、そもそもお話自体が面白いということ。加えて、登場人物にちゃんと血が通っていること。そこが巧みなものに、臨場感だけを売りにするような映画が太刀打ち出来るわけがない。『カルト』も物語の進む方向が予測出来ない。ドキュメント風であることで生まれる気持ちの悪さ、居心地の悪さ、生々しさ。一進一退のスリリングな攻防が、あれよあれよという間に、壮大な闇の世界との戦いになっていくのが圧巻。

低予算なのが本当に惜しい。『へんげ』もそうだったが、これだけ力がある監督たちを、映画会社はもっと積極的に起用しないと。無能と呼ばれても仕方ない。