眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『怪獣総進撃』をみる

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監督は本多猪四郎。1968年の作品。

ゴジラ映画という、子ども映画の中に、ぎょっとするような暴力描写が入る。銃撃戦で、腹から血を流す者、頭に着弾して絶命する者。土屋嘉男が唐突に窓から飛び降りるシーンのショック。そのあとの、耳の後ろから操縦機を取り出す場面の傷口の生々しさ。小林夕岐子のイヤリングをもぎ取ったときにたらーっと垂れる血。したたるほどに流れるのが、子供だったら強烈に印象に残るだろうし、非常に痛覚を刺激する。またサディスティックであり、エロティックでもあるという、本多監督の微エロぶりが濃厚に刻まれている。必然性があれば、子ども映画であっても容赦なく描く姿勢に、映画監督としての矜持がみえて、年をとっての鑑賞に耐えるのは、そんな大人の視点が隠されていたことに気付くからなんでしょうな。

特撮でも、特技監督円谷英二から有川貞昌に変わったせいでか、血の描写が増え、今回みていて気付いたのは、踏ん付けられたキングギドラの口から、血がピュッと噴き出すこと。細かい演出が入っているんだな、と感心。また、地上を進む戦車部隊を、上空のヘリコプターよりも上からの俯瞰でとらえたショットなど、立体的な空間表現の場面があるのも新鮮。有川特撮の個性だろうか。円谷演出とは違う工夫や視点がもっとあるのかもしれない。不勉強を恥じる。『北京原人の逆襲』もまた見返してみよう。

最後に怪獣たちに手を振るのは、別れの挨拶なんだろうなと思うと、少し切ない。いい終わり方だった。でも好評で、このあと続いてくれたことは、そして今も作られていることが、大変うれしい。