眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

十三人の刺客(1963)

監督は工藤栄一BSプレミアムで。

ぜひともみたいと願っていたある日、民放の深夜だったか、サンテレビあたりの昼間だったか、ひっそりと放送された(たぶん一時間半だったような気もする)のを愉しみにしてみたのはいつのことだろう。そのときの印象は、ナレーションを始め、俳優たちが何を言っているのか半分くらい聞き取れなかった、ということ。元々の音が悪いこともあるけれど、時代劇言葉というのだろうか、台詞回しや用語に頭が追いつかず、意味がよく判らないまま。どうして丹波哲郎菅貫太郎を殺そうと決めたのか、そもそものところが判らないまま、戸惑いながらみたな、と思う。クライマックスの戦闘も、思っていたよりも地味で、正直なところ何が面白いのか、掴めないままであった。それから何度となく見る機会が巡ってきて、その度ごとに見返していくことで、この作品の重量級の凄味が徐々に判って来た、という感じである。今はもう大好きな映画。今回も堪能した。ただ、決して愉快痛快な映画ではないので、しょっちゅう見る気にはなれないけれど。

やはり内田良平演じる鬼頭半兵衛がいい。切れ者にもかかわらず、暴君に仕えたためにせっかくの出世の道も閉ざされてしまう。だが、それでも主君に仕えて命を散らして行くのが、どうにもやりきれなくて、うなだれてしまう。それを武士の道として戦い、納得して死んでいくのだ。あまりにも厳しい、侍の姿。自分に厳しい人間は、こんな生き方を選んでしまうのか…。里見浩太朗が、丘さとみに、いつ帰りますか?と問われて「盆には帰る」という覚悟も悲しい(リメイク版は、本当に帰ってきてたけど。あれでもいいけど、ちょっと無粋ではないか、とも思う)。あと、月形龍之介と水島道太郎もいいんですよね。何度みてもいい。次に放送されるときには、またみるであろう。