眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

大学の若大将(1961)


監督は杉江敏男
プールに飛び込んで25メートル泳ぎきるタイトルバック!にびっくりさせられる、東宝若大将シリーズの1作目。加山雄三を本格的に売る、という姿勢で臨まれた作品なので、その魅力がこれでもかと画面に漲る。
麻布の老舗すき焼き屋の息子で、大飯食らいで、バンドをやって、スポーツが得意で、喧嘩は強く、人当たり満点で、ゆえに女にもてる。仲間はもちろん、おじさん、おばさん、おじいさんまで転がしていくくらいの人的魅力の圧倒的な吸引力。このあとの作品にまで引き継がれているか、記憶はないけれど、ほとんど意味のないような、若大将の笑顔が何回か登場する。へへへ、とか、へらっ、とか、にこっ、とかというような、流れを意識した自然な笑いではなくて、そこだけ切り取ったような不自然なカットなんだけど、加山雄三のスター性には、かっこいいだけのものではなく、かわいいところもあるんだよ、というアピールにも思える。おばあちゃん子である、という役柄と加山自身の経歴を合わせて、年配層にも、孫をみてるみたいな感覚を売ろうとしたんじゃないかとか、そんなことも思った。
いやしかし、恵まれた青春ですよね。経済的には何も不満はないだろうし、好き勝手にやって、マイナスと思われることもプラスに転じさせる。絵にかいたような成功の物語なんだけど、全く嫌みがない。けっ、なんだよ、ぼんぼんがよ、というひねくれた気持ちでみてもいいはずなのに、そうならないところが、加山雄三という人間の特異な資質なのだと思う。
澄ちゃんはやたら焼きもちやきで、付き合うと面倒臭いだろうなあと思うのだけど、そこはきらっきらの星由里子なので全く問題なし。団令子は、ポジション的にはヒロインでもあるのに、少々勿体ない使われ方になっている印象。これがデビューという藤山陽子は、やはり美人だなあ、と思いますね。お芝居はあまり上手ではなかったけれど(よけいなお世話だ)。江原達怡は、藤山のことが好きなのだが、彼女と若大将のお見合いが決まり、傷ついて部屋を飛び出すシーンがあるんだけど、このときの体のやけに色っぽいしならせ方が、妙に乙女っぽくて可笑しい。青大将は、ちょっと間抜けではあるけれど、この作品ではまだ悪役の扱い。憎めないか?というと微妙なところ。澄ちゃんのこと平手打ちにするし。何よりも、飯田蝶子さんを車で轢いてしかも逃げようとするんですよ(この場面、結構ショッキング。蝶子さん、少し血も流してるし)。あと、北あけみ!かっこ良過ぎ、スタイル良過ぎ!芦ノ湖でみせる豹柄のビキニ!「海底軍艦」でも豹柄だったけど、それが似合っている。素晴らしい。幼い頃の小堺一機は、「海底軍艦」でのビキニ姿で、北あけみファンになったらしいですね。いや、それは仕方ない、と思う。
あとはもう、昔のロケーションとか、衣装の可愛さ(中真千子が着てるのとか)とかカラフルさとか、細かいセットがいくつも作られていることとか。今となってはなんとも贅沢な作り方で、映画が娯楽の王様だったころのお金のかけ方が、観ていてひたすら愉しい。それと、田能久でみなが踊っているラストシーン、主役の若大将が人に埋もれちゃって、どこにいるか全然わかんないの。すごくぞんざい。そういう大雑把さも好きだ。
番組の最初には予告編が流れたそうで、そこはうっかり見逃してしまった。次回からは、開始時間にテレビの前にちゃんと座っていたい。