眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「未知との遭遇 ファイナル・カット版」(BSプレミアム)

前半の、じわじわとUFOとの接近遭遇が描かれていくのは、ミステリアスであり、小出しのサスペンスが大変面白い。その存在を決して公にしない政府側と、だから何が起きているのか判らないにもかかわらず、どんどんはまり込んで行くリチャード・ドレイファスたちの様子がスリリングでもある。
そして仰天するのは、あれだけサスペンスで引っ張って行った先の、デビルズタワーの向こう側のクライマックスが、大変平和的なこと。改めてみて凄いな、と思う。サスペンスの面白さが、その先でそれと関係のないようなことに繋がっているのは、期待するような何かが起こらないという不満をもたらすのだが(拍子抜けというやつ)、それを堂々と、というか、ぬけぬけと見せる、スピルバーグの度量の凄さ、器の大きさが圧巻。宇宙人との平和的交流を、じっくり丁寧にみせる、腰の据わりっぷりよ。しかも、段取りを凄く丁寧にみせるのが素晴らしい(常々思っているが、物事のプロセスを丁寧に描写するだけで、映画や小説は、確実に面白さを放つ。面白くなければ、それは作り手のミス)。段取りごとに何かが起こる、という見せ方も秀逸で、これが飽きさせない。そこには、当初想像する、サスペンスと直結する何やら恐ろしいこと、とは違う形での、次に何が起こるのか?という興味がうまれている。いやはや、本当に凄い。今の娯楽映画とは違うスケール感と演出のテンポだと思う。

「特別篇」しかみたことがなかったので、リチャード・ドレイファスが家の中に植木とかポリバケツとかを放り込むところは、たぶん初めて見た。あの辺、滑稽というには狂気じみている。いくら主役でも、とても、ドレイファスの側には立てない。テリー・ガーと子供たちが可哀相。あと、メリンダ・ディロンの役は、スピルバーグとしてはゴールディ・ホーンが希望だったのではないかな?とも想像した。金髪で、くしゃっとした顔立ち。ホットパンツ姿のときとか、「続・激突!」のゴールディを思い出してしまう。
子供たちにもみてほしいなあ。「E.T.」が素晴らしいのはもちろんだが、こちらの方が、サスペンス演出の素晴らしさで、一気に引きつけるのではないだろうか。