「クレジットタイトルは最後まで」を読んだ
川本三郎・著(中公文庫/2000年)
元の単行本は、1996年の刊行。実に19年前の著書。紹介されているのは、その当時の公開作品になるので、今となっては懐かしいラインナップになっている。
何度もタイトルが出てくるのが「フィールド・オブ・ドリームス」。野球の映画ということと、スモールタウンもの、ということで、かなりお気に入りだった様子。他に、ブルックリン・ドジャース、竜巻、ウィリー・メイズ、西部劇、フォレスト・ガンプ、アイオワのマジックアワー、といったものが、同じ文脈として語られている。アメリカ文学を愛する川本さんらしい趣味であろう。永井荷風に惹かれたのと同様に、少し遠い時代への憧憬、郷愁もあるんでしょうな。
ノスタルジーだけの内容ではなくて、その時点での現在である「友だちのうちはどこ?」や、パトリス・ルコントの作品への言及も読みどころ。今そこに現実にある厳しさを見つめながらも、弱い立場の存在への共感とやさしさが、読んでいて救われるようである。
また、映画の一場面や、出て来た小物や、俳優たちから、連想を次々に繋げていく「映画尻取り遊び」の愉しさ。これ、やろうと思ってもなかなか難しい。博識で、記憶力がないと無理。
読めば、紹介されている映画がみたくなる。アメリカ文学にも触れてみたくなる。そんな気にさせられる好著。たまに引っ張り出して来て、読み返したい。