眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「江戸川コナン失踪事件〜史上最悪の二日間」は、内田けんじ脚本!

監督は、山本泰一朗。

風呂が壊れたために、銭湯に行ったコナンと蘭、灰原。怪しげな行動を取る男に注意を向けていたコナンだったが、うっかり足を滑らせて転倒。気を失ってしまう。出て来た蘭たちは、コナンが運ばれたらしい救急病院に向かうが、ここには来ていないと言われてしまう。灰原と阿笠博士は、銭湯に置きっぱなしのコナンの服を取りに行くが、コナンの母親と名乗る女性が持って帰ったと聞かされる。不審に思った二人は、その女性を追跡するが…。

脚本が内田けんじ。「運命じゃない人」「アフタースクール」などの脚本・監督でお馴染み。これが今回最大の売りだが、映画好きには知られた名前も、一般視聴者やアニメファンには全く意味がないかもしれない。

香川照之広末涼子も出演するとなると、「鍵泥棒のメソッド」ではないかとすぐに思い至るが、まさに「鍵泥棒」のいわば続編とでもいうべきものになっていた。あの映画が好きな人は必見の一作。

とはいうものの、過去の作品ほどに、時系列が入り混じるような趣向は無く、「ああ、なるほど…」という内田けんじ映画の醍醐味も薄い。内田脚本であることを知ってみているので、ある程度のおかしな描写にも、何かあるなと勘が働いてしまう。お話しの筋立てそのものにも、トリッキーさはそれほどないので、予想外の展開、というものにはなっていなかった。しかし、小さな伏線は随所に散らばった形で撒かれてあり、それらをきちんと回収していくのはさすがの仕事ぶり。コナンではお馴染みのあの機械が、トリッキーな形で使われている辺りなどは、ミステリー的には常道ながらも嬉しくなる趣向だった。

以下、「鍵泥棒のメソッド」をみている人にとっては、ネタバレ。カギカッコ内反転

この作品だけをみても充分に面白いとは思うのだが、やはり「鍵泥棒のメソッド」をみていれば、もっと愉しめる。例えば、コンドウ(香川照之)と(香苗)広末涼子は、「結婚することになっているとか。「鍵泥棒」事件の最中、実は今回の「失踪事件」のきっかけがスタートしていたとか。そしてまた、桜井が後半になって登場してくるとか。声が堺雅人でないのは残念だが…。

多分、多少制約があったと思うのだが、その中で、コナンファンやアニメファンにおもねることなく、いつもの内田映画らしい内容に仕立ててあるのは嬉しい。ちなみに脚本協力として、「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」のプロデューサーである、赤城聡の名前もクレジットされている。

他、思ったこと。灰原って、コナン(というか新一)のことを意識してたっけ?あのラストの頬を少し赤らめるところ、あれ何よ。労いの言葉に喜んだだけなのだろうか…。それから主要ゲスト声優陣が、草尾毅深見梨加水島裕田原アルノとベテラン過ぎる面々で固められていたこと。いやーがっちりした布陣ですわ。まるで隙がない。嬉しいけど。それと、久々にみたせいで余計に思うのだろうが、出演者の皆さんの声が変わっているのに気付き、長いことやってるんだなあ、としみじみ。

もうひとつ、阿笠博士と灰原の乗ったビートルが、大型トラックに襲撃される場面。ここがなかなか気合の入った迫力ある描写になっている。クレジットを頼りにすれば、メカ作画監督の水原良男(と作画スタッフ)の手になるもののようだが、描き込み方の熱量が凄い。他の場面との作画レベルが明らかに違う。ガードレールにぶつかって灰原が放り出されるさまを、ワンカットで引きの画でみせるのも迫力。突出し過ぎていて、全体から浮いてしまっている。だが、凄い。

そして最新作も絶賛公開中!


2014年12月26日(金)「金曜ロードSHOW!」で放送