眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「ワイルドシングス」 感想

〈あらすじ〉ブルー・ベイ高校でカウンセラーをしているサム(マット・ディロン)が、セレブな生徒ケリー(デニース・リチャーズ)からレイプされたと訴えられる。富豪の娘ということもあり街を巻き込む大スキャンダルとなるが…。


以下、ネタばれを前提とした文章を書いています。




18年ぶりの再見。恐ろしいほどのどんでん返しのつるべうち。映画におけるどんでん返しの記録をつくろうとしたのだろうかと思わせるほどに、えっ、という展開が続く。何も知らず、評判も聞かずに見た人がひたすらうらやましい。

前半は、サムの受難の物語。身に覚えのない嫌疑をかけられて動揺し、追いつめられる。職場でも立場を失う。付き合っていた女性はやり手弁護士(ロバート・ワグナー)の娘で、当然交際は破談。しかもケリーの家は富豪で、そのやり手弁護士がついていて勝ち目なし。サムが縋るのは、ケン・ボーデン弁護士だが、演じるのはビル・マーレイなので、頼りない上に胡散臭い。が、よれよれの立場の人間が、一気に形勢が逆転して救われる痛快な展開となる。ボーデンが、同じくサムにレイプされたとして証言台に立つトーラー(ネーヴ・キャンベル)に質問して、つじつまの合わないことを攻めて行くところなど、裁判物としてもきちんと描かれているのもよい。逆転の結果、浮上するデニース・リチャーズのビッチぶりも素晴らしい。

サスペンス映画らしい、かっちりした部分は、この裁判のところで終了。これ以降は、やり過ぎなくらいの意外な展開の連続となる。実はサムとケリーとトーラーがグルだったと判るモーテルの場面でほぼ前半1時間。ミステリっぽかった映画は、フロリダの湿気と熱気の中で、どろどろとした人間関係が渦巻く犯罪サスペンス映画へと、がらりと様相を変える。さらに面白いのは、これはケリーの信託預金を奪うために仕組まれた犯罪だと直感したケヴィン・ベーコン演じる刑事レイが、違法行為もかまわずに彼らを追いかけ始めるところ。ざっくりと分けると、前半はマット・ディロン、後半はケヴィン・ベーコンと、主人公が変わるのだ。観客は、前半では追いつめられる人間に加担して見ていたのが、後半は追いつめる側に加担して見て行くことになるという、展開の妙。どんでん返しはこの映画の最大の魅力だが、状況の入れ変えというところも面白さの大きなポイントになっている。

色んなサスペンス映画の記憶の上に成り立っている映画でもある。証人の発言でひっくり返る「情婦」や、ヨットが出てくる「太陽がいっぱい」や、死んだはずの人間が金髪になって甦って来る「めまい」などなど。それらをモザイクのように組み合わせた上、パルプノワール的に煮詰めて仕上げた作品のように思える。どんでん返しに気を取られてしまいがちだが、低劣で猥雑な味わいを湛えた犯罪ノワール映画としての趣も捨てがたい。

脚本は、スティーブン・ピータース。「公園はおれのもの」「対決」の作家だ。こういうお話しも書けるのか、という楽しさ。

年を取って来ると、テレサ・ラッセルの妖艶さがいいですね。バルコニーから下着姿で現れる場面。肉のつき方がとてもいやらしい。

↓やり過ぎで有名な「木曜洋画劇場」の予告。

監督 ジョン・マクノートン/WILD THINGS/1998/アメリカ映画