眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『ルームメイト』をみる

監督は古澤健

今邑彩の小説を元に作られている。未読なのだが、あらすじを読んでみると、同じネタを話の根幹には据えているが、話の作り方はかなり違う感じ。そのせいでか、クレジット表記は原作ではなく、原案となっている。

殺人事件を追う現在のパートと、何が起こったのかを見せる過去のパートが交互に描かれて、運命の瞬間に近づいて行くという構成。日常風景の温かみから、怪しげな色彩と空気へと変化していく撮影と照明の巧みさ、それが禍々しい異界への扉を開くように描かれているように思え、独特のホラーテイストを生みだしている。これはなかなかよろしき雰囲気。野戦病院のごとき病室や、アドリアネというクラブへと至るトンネルなどはその典型で、ゆらりと吹きあがる蒸気、英語やハングルの看板が立ち並ぶ奥にある店の佇まい、また店内のやけにゴージャスかつ退廃的な様子など、どこかこの世界とは別の、異形の世界の話のような、悪夢的イメージが敷き詰められているようだ。サスペンス映画として成立させつつも、古澤健の視線の先にあるのは、ホラー映画なのだということが良く判る。この世界観に対して、北川景子深田恭子は、頼りなげで儚げな様子からドスのきいた裏側の顔まで演じてみせて、誠実に奉仕しているのもよい。

あれがこうでこうなっていたんだ、とする物語の見せ方、伏線の張り方は非常に丁寧で、そのミステリ趣味の強さは、今邑彩も、健在なればきっと喜んだことだろう。変更した部分は、基本の物語から派生して、登場人物の心情に寄り添った形で最期をまとめられている。もはや脚色ではなくてオリジナル脚本みたいなものだが、そういう点でも古澤健はよい仕事をしたと思う。2時間ドラマじゃなくて、ちゃんとした映画だ。