眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

三大怪獣 地球最大の決戦

監督は本多猪四郎。1964年の作品。
BSプレミアムで。
沢村いき雄さんは、東宝(特撮)映画ファンにはおなじみの大部屋の俳優さんだが、この作品での漁師役は、なかなかいいですね。飄々とした軽さと可笑しさがあって、なんともいい味。

関沢新一脚本の、スムーズ過ぎる話運びも素晴らしい。例えば、横浜で金星人を保護→ホテル→殺し屋たち→刑事→ひと悶着→ゴジラ上陸、といったあたり、一切流れを止めないんですよね。そこに至るまでには、結構話は広がっていて、ここで一気にひとつにまとまる作りも、ご都合主義と言って、鼻で笑ってすまされるほど簡単なものではないと思います。

それから、夏木陽介若林映子のほのかなロマンスの部分。よくよく考えてみると、夏木陽介があそこまで王女保護に必死になるのは、刑事としての使命だけではなくて、女性として意識しているから、なんでしょう。そう思うと「そしてあなたのボディガード」という台詞も、職務以上の感情が込められていたんだなあ、と。仮に脚本上は、二人の関係にそれほど注力されていなくても、別れの場面で二人のアップをちゃんと入れてある(切なげな表情もいい)のは、監督としてはやはりそこにかなり意識的だったんだな、と改めて思います。しかも去っていく王女の乗った飛行機を見送る場面では、星由里子と小泉博は、夏木陽介の様子をちらりと心配そうにみているんですよね。二人は、夏木の気持ちに気付いているんですよ。(俳優の)ラストカットは、空をみる夏木陽介の表情で、ああ、そういう映画だったんだなあ、と。ちょっと切なくていいラストなんですよね。本当のラストはそのあとの怪獣たちの姿になりますが。