眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

精霊の守り人 シーズン1 感想

精霊の守り人」第4話をやっとみた。これでシーズン1が完結。続きは2017年の年明けからの放送になる。先の長い話だ。これだけの長期にわたる撮影だと、現時点では人気があっても放送するころには過去の人になっていたりする可能性もあり、非常にギャンブル要素が高くなる感じがする。が、旬をずらしてしまうこともドラマや映画の面白さだろう。むしろそういうギャップこそを愉しみたいものである。

ざっくりだが、俳優さんの演技ぶりを中心に感想をメモしておきたい。ドラマ自体は、スケール大きく始まった割には、こじんまりとまとまった感じがあった。しかし3年に渡るシリーズのスタートにあたる全4話だと考えてみれば、これでよかったのかもしれない。

藤原竜也演じる帝は、ろくでもない人物で、哀れみすら覚えさせない愚かな存在。薄っぺらい存在であることを自覚しているのか、自分の身を危うくさせるチャグムを異様に恐れ、葬り去ろうとする姿。執念と諦念とが彼の心をざわつかせるが、その辺の不安定さを藤原竜也は見事に演じていた。テレビや映画のときではなく舞台での彼の芝居に近かろうか。聖導師を演じた平幹二郎。これはもうさすがというか、堂々たる芝居だった。いわばこの作品の演技面における要。国を生き延びさせるためには、今の帝の力では無理だと判断し、あれこれと画策しながらチャグムを助けようとする。普通の日常を描いたドラマであれば、この芝居は完全に浮いてしまうところだが、異世界ファンタジーという世界ではがぜん輝いた。舞台仕様の藤原竜也も、だからこそ生きるのだ。仮面ライダーや特撮作品に出演することの多い神尾佑松田悟志は、それがよくわかった演技になっていて安心してみていられた。特に松田の演じたジンは、チャグムを殺せという密命を帝から直接受けて、バルサたちを追いかけながらも、土壇場でチャグムを助けるという意外な儲け役。一件落着したあと、カンバルの王を殺すために民衆の中にまぎれたバルサが、短刀を放った瞬間、それに気づいたジンが矢を放つ。矢は、バルサを狙ったのか、刃を弾いたのか…。簡単に退場するのかと思いきや、最後の最後まで出番があったのも喜ばしい(松田悟志は、旅番組やラジオ第一放送でのパーソナリティなどの地道なNHKへの貢献が、今回のドラマ出演への呼び水になっていたということだろうな)。高島礼子は特殊メイクで呪術師の姿のまま、一度も美しい顔をみせることがなかったのも素晴らしい。ダメな女優は無理やりにでもきれいな姿を突っ込んでくるだろう。高知東急覚せい剤所持で逮捕されてしまったため、主演ドラマにも暗雲が立ち込めている様子だし、なにかと硬いNHKのことだしシーズン2では降板ということにならなければよいが…。あるいは出番がなくなる可能性もある。トロガイはもともとシーズン2への登場はないのかもしれないが。チャグムを演じた小林颯は、相手を見上げるときの三白眼がぎらついた感じで恐ろしく、無邪気なときとの落差があってよかった。場面によっては少女のようにも見える、まだ幼い少年の危うさと、わがままな少年が精神的に鍛えられ強くなっていく姿をきちんと演じていた。バルサとの別れの場面も泣かせた。半面、少々残念だったのは、時代劇芝居の中でひとり、日常の芝居で演じ切ろうとした木村文乃。舞台的演技という技術が他の俳優に比べて未熟だった、ということかもしれないが、これは惜しかった。東出くんに関しては、「さよならドビュッシー」のときは悪くないと思ったけど…。使い方が難しい俳優さんだと思う。でも今回の彼の演技を「良い」と言っている意見もあるし、受け取り方は結局見たひとそれぞれ、ということになるのかな。林遣都のシュガもよかった。星を読み解くことが大好きな若者っぽさがよく出ていて。で、結局、シュガを閉じ込めたのは聖導師だったのか、それとも上司のガカイ(吹越満)の悪だくみだったのか、どっちだったの?聖導師は閉じ込められていることを知らなかったと思いたいな。

ともあれ、ゴールデンタイムにファンタジーを持ってくる度胸満点な編成はさすがにNHKにしか組めないだろうし、実現したことに恐れ入った。他の民放局では不可能といってもいい。セット、衣装、ロケーションと非常に手の込んだものになっていたし、アクションもよかった。4話では洞窟内という閉所での立ち回りがあり、アクション俳優やスタントマンならいざ知らず、綾瀬はるかがあそこまでちゃんとみせるとなると、こちらとしても正座して応えねばならぬような気になった。

クライマックスには、ラルンガの実体をちゃんとみせるVFXも盛り込んでいたのもうれしい。出来ればもう少しじっくりと見せてほしかったところだが。ただ、異世界観を出すための実景へのCG加工はあまりうまくいっていない部分も多かった。手を加えたことで作りものっぽさが増してしまい、生のスケール感が減じているように思えた。そういえば、水中のチャグムのそばに精霊のようなものがたくさん集まってきて彼が光に包まれる場面があったが、ここはリアルさがなく、非常に絵画的なイメージになっていたことを思い出した。やろうとしているのはこの線か?リアルな世界ではなくて絵画的な世界。VFXの少しなじんでいない感じはもしかして狙ったものだったのかな?などと思いつつ。シーズン2も愉しみに出来る面白さだったよ。期待して次を待ちたい。