眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『スティング』をみる

監督はジョージ・ロイ・ヒル。1973年のアメリカ映画。

BSプレミアムで。

ネタをひねくりまわした、どんでん返しのつるべ打ちみたいな映画は、73年当時にはまだそれほどなく、今にして思えば、観客もまだまだプリミティブではあったろうが、あまりにも有名な結末も、今や誰も驚かないのかもしれないし、その手のジャンルの傑作だの名作だのと言われているうちに時間が経ってしまうと、どんでん返し、という部分のみでしか語られなくなってしまうのは、過去の映画の宿命ではあるかもしれない。が、この映画は、当時のトップスター2大巨頭であるポール・ニューマンロバート・レッドフォードの共演作であり、まぎれもないスターの映画なのである。スターがスターであることを誇示して何も問題がない、正真正銘のスター映画。多くの人に愛されていた映画なのだ。そういう部分が忘れされ、何も知らない若者たちに、つまらないと言われては立つ瀬がないというか、悲しくなってしまうよ。まあ、自分たちもそうだったんだけどもねえ。

ジョージ・ロイ・ヒルは、詐欺師仲間たちの共同戦線、若者の無軌道、師匠格の男の少しやさぐれた感じを、軽快にみせていく。しかもラストに、してやられた!という快感がある。脚本のデヴィッド・S・ウォードによる鮮やかさは勿論のことながら、同時に、ロイ・ヒルの手並み、俳優たちのうまさと彼らを適材適所に置く巧みさゆえあってのものであることは、登場人物のキャラクターが、クライマックスを生かすためにどう描かれているか、ということからも明白。映画の見せ方、ということでは、過去のものになっているとは全く思わない。70年代の映画なのでそっけなく、あっさりしたところがあるが、それもまた、今となっては懐かしい味わいだ。久しぶりだったが、とても面白くみた。

この映画の見どころに、ポール・ニューマンのカードマジックの場面がある。手元だけが映っているので、ふきかえか、と思いきやカメラがスッとあがるとポール・ニューマンの顔。凄い!と思ったが、ここはやっぱりふきかえらしい。カットが割られているのに気付かせない、自然なタイミングで繋いでいるんだね。

ウィンクするのも、あとで失敗するのも、知ってから見直すと観客に向けてのジョークになっていて、たのしい。