眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「相棒14」 第11話 ネタばれ感想

<あらすじ>女優・桜庭かなえ(高橋かおり)の姉でマネージャーの恵子が殺害された。恵子と離婚協議中の夫が疑われており、夫の弁護士が冠城の旧友だったことから、特命係は相談を受ける形で事件を勝手に調査することになる。やがて、撮影中の映画で共演しているベテラン女優・桐島万里子(多岐川裕美)とかなえの仲が非常に険悪だということが判り、右京たちは二人の確執に事件の真相が隠されているのでは、とにらみ始める…。

なかなか面白いと思った。というのは、事件の真相が、はっきりと描かれないからである。

かなえは、殺された姉の残された一人娘は、実は自分の娘で、姉に人質にでも取られているかのような物言いをする。万里子と自分の境遇が同じものだ(万里子はかつて将来を嘱望された女優の娘がいたが、いわれのないスキャンダルで追いつめられ自殺しているのだ。しかもそのスキャンダルを仕組んだのが、人気の落ちていたかなえの姉・恵子だった)と思わせるために。そう信じ込んだ万里子は、自分一人でやったと告白して自首。が、拘置所内で、人質に取られているように言った娘は、本当に姉の子供であったことを知らされて愕然とする。あの女に騙されていたのか!と。そのあと警察が、かなえを殺人教唆の疑いで連行するところで終わるのだが、右京が疑った通り、真相は殺人の共謀だろう。

普通は、共謀していたという事実を画面上で描くところだが、そこに関して全く触れていないのが異色。恵子が家にやってくるタイミングを、万里子がどうして知り得たか?そして特に決定的な疑問として、どうして万里子が、犯行現場の家の中に入れたのか?ということがある。鍵はどうしたのか?こじあけたわけではないようだ。扉はあらかじめ開けられていた、あるいは、万里子が鍵を持っていた。その二通りが単純に思い付くが、それらはどちらもかなえが協力しなければ無理な話しで、だとするのなら、二人が、恵子を殺すために共謀したと考えるのが妥当なのである。二人の謀だから、万里子は恵子を殺せたのだ。かなえの嘘を、万里子が信じるとは限らないし、信じたところで殺人までやるか?という感想をちらほらみるのだが、たぶんそうじゃない。そそのかし、そそのかされたのではない。あれは、二人でやった殺人なのだ。だがそこは、ドラマ上では描かれていない。あえて触れていないのだろう。曖昧にしたところが「相棒」としては珍しく、またそのために、さらに恐ろしいことも想像してしまう。

かなえが、そんな手の込んだことをやる女であると判ってしまうと、かつて万里子の娘がスキャンダルで失脚したことも、本当に姉の恵子の策略によるものだったのかどうか…。かなえも加担していたのではないか?とも想像出来てしまう。いや、そもそも、万里子の娘のスキャンダルになど、かなえも恵子も関わっていなかったのではないか。万里子に協力させるために、恵子がやったと嘘をついたのではないか。と、嫌な想像は後を絶たないほどにどんどん出来てしまうのだ。事の真相はやぶの中に踏み入ったかのように、あやふやになっていく…。

高橋かおりは、かつて閣下(長門宏之)を手玉に取る稀代の悪女として「相棒」に出演したことがある。「相棒」は忘れた頃にかつてのキャラクターが再登場するケースもある上、あれだけ印象的な役をやった高橋かおりが別人の役で出てくるのは、ちょっと奇妙に思えたのだが…。だが最後までみてみれば、なるほど、だから彼女だったのか、と思えるものでもあった。あの悪女よ再び、ということだったんだろう。

ラストで万里子は、かなえへの激しい怒りをむき出しにする。獄中から復讐の炎を燃やす、黒い服を着た女といえば…。女囚さそりか…。そのための多岐川裕美だったのか…。恵子が生きているように思わせるアリバイ工作で、ツバの広い帽子をかぶっていたのも、よくよく考えてみるとそういうことだったのか…。それは考え過ぎだろ、と思うかもしれないが、同じ東映だからな。無いとは言えない。