眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

冒険者たち ガンバと7匹のなかま(1984)


監督は出崎統
テレビシリーズ全26話を再編集した劇場版。どういう経緯で劇場版が作られたのだろうか。公開されたときも、なんで今さら?という感じがあった。ちなみに続編にあたる(だろうか?)「ガンバとカワウソの冒険」は1991年で、さらに時間があいて、ますます不思議に思ったものである。

総集編なので、オリジナルから削って削って、本筋だけを残している感じはある。どこを取ってどこを残すかは難しかったろう。7匹が結束するのは、波にさらわれたガンバを探すところに集約されていて、そのためここに、前半では時間が割かれている。そこで展開は後半に入り、比較的のんびりとした空気もあった前半とはうってかわって、苛烈で過酷な、イタチとの戦いに突入していく。
残念なことに、ネズミたちそれぞれのドラマは、ほぼ完全に切られている。残っているのは、冒険もののドラマティックな部分のみといってもよろしいが、それだけに、物語自体の面白さ、シンプルな強さが、よりはっきりとしている。テレビ版は、大人になって見返すと、あんまりすぎる人生模様にうなだれてしまうほどの中身の濃さなのだが、本放送時には、そういうことは意識せず、この先どうなるんだろう?というドキドキとワクワクでみていた。島を目前にしながら、潮の流れが早過ぎて渡れない。どうするか?というときに、オオミズナギドリの力を借り、パラシュートを使って降下するという胸躍る展開。島に伝わる歌に、逃げるヒントが隠されていると気付く一種のミステリー。そしてガンバたちの最後の捨て身の作戦(それぞれが最後に握手するという泣かせる場面もある!)。こういうことに、ハラハラしないでいられるか?ということ。つまり、子供を前のめりにさせる、優れた冒険ものであったのだ。
仮に、この劇場版で「ガンバ」をはじめてみる、というのなら、それはそれでいいことだと。これはこれで、いい。破綻なくシンプルにまとめてあるので、冒険娯楽ものとして、素直に面白い。そして、気に入れば、テレビ版もみてもらえたら、もっといいな、と思います。何故なら、テレビ版は、この劇場版よりも、何倍も面白いからです。
声優さんも鬼籍に入られた方が多くなり、みていてもしんみりしてしまいます。しかもこのタイミングで、11月1日に、シオジねえちゃんを演じた、弥永和子さんが亡くなられたというニュースがありました。ガンバとシオジの、ほのかな恋の予感めいたものを見ながら、死にゆく長老のための歌声を聴きながら、追悼したいと思いました。