眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

川北絋一監督 死去

先日「装甲巨人ガンボット」が最終回を迎えた。画面を横切るように逃げる人々の後ろでロボットが激突するカットが、往年の特撮映画らしい演出。光線の応酬になるクライマックスも、平成ゴジラシリーズのようで、こういうのも懐かしい感じがするな、と思いつつ。最後はガンボットのミサイルマイトでとどめ、というのも「流星人間ゾーン」を思い出させ、一種の原点回帰かな?などと思ったりして愉しかった。あと、位置関係が把握出来ると、より盛り上がるもので、天王寺公園側から攻めてくるデスレッドを、ハルカスから見下ろしたカットや、駅前交差点の、円形歩道橋ごしのロボットの戦闘も、土地勘のある人間としてはうれしい場面だった。

8日(月)に、BSプレミアムで放送された「零戦燃ゆ」だが、これの特撮も川北監督によるもの。

あまりいい印象をもっていなかったのだが、見返してみると、そうでもない。昔、テレビでみたときは、だいぶカットされていたのかもしれない。零戦で戦うことに誇りをもっていた人たちの物語であり、それを好戦的ということは出来るだろうが、スタンスとしては青春映画であり、そこにうまくまとめられていた。大体、脚本は笠原和夫なのだ。好戦映画になるはずがない。製作費が15億円というのも、伊達ではない。フルスケールの零戦を再現しているのは、やはり説得力がある。これが何機も並んだ基地の場面などは、実際にそこにブツがある、という実感が素晴らしい。そしてまた、妙に感慨深くもなったりするものである。CGではこの感じがうまく出せないだろう。特撮に関しては、確かに過去のフィルムの流用が目立つ。が、交戦中に地上を見下ろすカットなどは、おっ、と思わせる描写であり、おそらくそれまでの空中戦特撮ではみたことがないものではないか。メインとなる見せ場は、丁寧に撮られているし、記憶していた以上に、特撮映画だった。

「ガンボット」と「零戦燃ゆ」を続けてみて、ちょっとした川北祭りだなあ、と思っていただけに、この訃報はショック。しかも、新作ゴジラの製作発表の直後。偶然だけど、運命的な何かを感じてしまったりもする。1942年12月5日生まれで、12月5日死去。誕生日に逝くというのまた、不思議なめぐり合わせだ。まだ72歳。残念としかいいようがない。ありがとうございました。どうぞ、やすらかに。