眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

シャドー・チェイサー(2012・米)

THE COLD LIGHT OF DAY
監督は、マブルク・エル・メクリ。
アクションシーンの丁寧な見せ方が素晴らしかった。ベロニカ・エチェーギの叔父の家で敵の襲撃にあい、屋上に逃げてそこからの脱出を試みる、ヘンリー・カヴィルとベロニカの場面。テレビのアンテナのコードを使って下に降りるのもぎりぎりな感じだが、カヴィルが逃げるときの、アンテナが引っ掛かって宙ぶらりんになって…という場面、カットは細かく割られているけれど、経過をいちいちみせているところで、おっこれは…と思わせる。後半は、銃撃戦とカーアクションに彩られた派手な見せ場になるが、特にこのカーチェイスがまたよろしい。編集のテンポがよく、またこれもカットを細かく割っているので、よくあるいつものチャカチャカしたアクションシーンのようだが、とりあえず車を走らせてそれを繋いだ編集ではない。よくよくみれば、2台の車がきちんと追跡戦をやっているのが判る。どこを、どんな風に、走っているかを丁寧にフォローしている。次のカットが、不自然なくらい無関係なところに飛んだりしない。前のシーンからの続きである、という流れを、きちんと画の中に撮り込んでいるのがよかった。アクション設計と撮影のコンビネーションが、相当良かったのだろう。観客の側の問題は、動体視力が付いてこれるかどうか、ということだけだ。
CIAが絡んだ話しに、後半は某国の某組織も介入してくるが、彼らが決して、カヴィルの味方ではない、というのも非情な展開。制限時間以内になんとかしないと家族を放り出す、という無情な脅しをかけてくる。八方ふさがりの中で手を貸してくれるのが、結局のところ犯罪組織…というか、それに近いところの人々、というのも、面白かった。
スケジュールの都合でか、所々に無理のある場面もあるが、本筋に関しては的確にサスペンスを積み重ねて、アクションで繋いでいくという、いい感じに、コンパクトにまとめられた作品だった。余計な寄り道やロマンスを避けたドラマ作りにも好感を持つ。こういう、適度に面白い映画というのは、大切にしたいもの。「96時間」はオリヴィエ・メガトンではなく、マブルク・エル・メクリを監督に選んだ方が良かったのでは、と思うほど。またアクション映画で会いたいものだ。