眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

13日の金曜日(2009年版) 感想

監督/マーカス・ニスペル

キャンプにやってきた5人の若者が行方不明となる。そのうちの一人、ホイットニーの兄クレイは、妹の消息を求めて、今も、周辺の聞き込みに当たっていた。住民にも警察にも疎まれつつ、孤独に行動するクレイ。そしてまた、ぼんくらな若者たちが、週末を過ごすために別荘にやってきた。当然の如く、彼らは、ジェイソンによる凶行に巻き込まれていく…。

冒頭はモノクロ映像で、オリジナル1作目のラストを思い出させるものになっており、死体の傍から、オノだかナタだかを手にして闇に消えていくジェイソンが描かれている。まあ1作目をリメイクしても、ジェイソンは出てこないからね…。ついで、バカみたいな若者5人が、惨劇があったというクリスタルレイクの近くでキャンプ。これがもう、80年代からなんの進歩もしていないようなバカっぽさで、うんざり。そして、ほぼ5人が全滅したと思われた瞬間に、「Friday the 13th」とタイトルが出る。なんという長いアバンタイトル。始まってから25分くらい経っている…。今は、タイトルクレジットがラストに出ることも珍しくないのに、と思っていると、そこから先は一気に現代風になる。なるほど、タイトル部分までで、古臭い80年代風テイストはおしまい、というわけである。そのために、区切りとしてタイトルをブチ込んでいるのだ。

このリメイク版で、最も印象的で、異様な雰囲気が立ち込める場面。若者が助けを求めて道に飛び出すと、ちょうどトラックが走ってきて、止まるところ。運転席から、ドライバーが手だけ出して、こっちへこい、と動かす。まさかジェイソンが運転している…?と思わせておいて、そうではないのだが、結局助けを求めた若者は惨殺され、トラックは荷台にその死体を乗せて逃げていく。映画の前半、町の住人たちがジェイソン(か、あるいは得体のしれない怪人)の存在を知っているらしいことが匂わされている場面がある。正体は、よくわからないけど、とにかく変なやつがいる、ということを信じている人たちがいて、それは住人たちにとっては禁忌であるが、ドライバーはそれに触れてしまう。このときのドライバーの焦り方は、殺人に出くわした、ではなく、やっぱりいた、という恐怖ゆえのものだったのではないか、と思うのだ。都市伝説が持つ、嘘とも本当ともつかない不気味な感じ。微妙な被膜を破って、怪物が現実に出現する恐怖。禁忌に触れてしまうことへの、心の深い部分での嫌悪、恐怖が溢れ出していたように思える。

加えて、このリメイクでは、超常的能力をジェイソンに持たせなかったことで、ヒルビリー物の持つ野蛮さも加わった感じがある。田舎ならば、そんなこともあるやもしれん、というような。しかし、そういう恐怖を感じさせるには、ジェイソンは超人過ぎて、バランスが難しい。

お色気シーンもサービスしてくれる映画だが、中でもジュリアナ・ギルがエロかったな。

ヒロインのダニエル・パナベイカーも可愛らしく、ただし清純派キャラクターなのでヌードはなし。処女性のある存在は、殺戮から逃れられる、というパターンがあるが、「スクリーム」や「キャビン」でもネタにされたように、それは、今ではパロディにしかならないことを、作り手も判っている。色々とパターン外しがあって、そんな愉しみ方も出来るかもしれない。

オリジナルシリーズを知らなくて、ホラー映画初心者ならば、なかなか愉しめる映画ではないか、という印象。アメリカでヒットしたのは、旧世代ファンだけでなく、若い世代が見に来たからではないのだろうかね。日本では、所謂Jホラー的なものはともかく、スラッシャー系ホラー映画は、若い人たちにとって、無縁のものになっているだろうから、ここからヒットに結び付けていくのはなかなか難しかろうね。

オリジナル版はこっち。

悪魔のいけにえ」のリメイク版に続き、マーカス・ニスペルがこの作品でも監督しているが、これまでのシリーズ中、一番良く出来ている(「ジェイソンX」「ジェイソンVSフレディ」は、番外編的なものと考える。この2作は、普通に面白い娯楽映画過ぎるし、ホラー映画という感じがしないので)。しかしながら、良く出来ている=怖い映画、とはなっていないことが、残念なところ。オリジナルの1〜4作目をうまくブレンドし直したような展開は、うれしいところでもあるが、マイケル・ベイが製作するとなった時点で、オリジナルのような映画は無理。話しの組み立ても見せ方も、セットの作り込みや撮影も、低予算ゆえに生みだされる、うすら寒さとは全く無縁のものだ。上出来過ぎる。映像に厚みがあり過ぎる。今は、ホラー映画をみることはめっきり減ってしまったが、恐ろしいホラーは、粗いフィルムかビデオ撮りで、安く、ぎこちなくて下手くそな、自主映画とプロの間くらいをよろよろしているようなところにあるんじゃないのかなあ。それは、昔も今も変わっていないように思うんだが(勿論、きちんと作られた上に、恐ろしい映画もあるけれども)…。個人的な意見だが、ホラー映画は、面白過ぎてはいけない、と思っている。面白さよりも、不気味さや得体のしれなさに重点を置いてくれないとダメだ。嫌な空気、不穏な気配、そういうのが濃密でないと…。

ザ・シネマの無料放送(録画)で。