眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

処刑ライダー(吹替) ★★★

監督 マイク・マーヴィン/1986/アメリカ/BS朝日(録画)/

バイクに乗ってふらりと町に現れた謎の青年ジェイク。バーガー店に勤めるケリーと仲良くなるが、彼女には不良共のリーダー・パッカードが付きまとっていた。そのパッカードたちの前に黒いカスタムカーが現れ、勝負を挑んでくるのだが…。

アリゾナの田舎町、バイク(馬)に乗る風来坊という設定からして西部劇の現代版。さらに青春映画とカーアクション、そこにホラー風味を加えたところが、作品独自の魅力と面白さ。パッカードは汚い手を使うことが冒頭シークエンスで描かれているが、基本あくまで勝負は一対一、スピード勝負一本というのも潔い。聞き分けの無い無軌道な若者たちのはずだが、変なところで律儀なのは、走る車を撮りたい見せたいという作り手側の事情によるものだろうが、そんなところも含めて憎めない。低予算映画としては、爆炎は凄まじいが、何よりもそのあとの煙と残骸の中で俳優たちに芝居をさせる所に節約精神が感じられて良い。そのおかげで現場の臨場感が増し、映画として厚みが出ている。ジェイクの正体が、パッカードたちに殺されたジェイミーだったとケリーとビリー(ジェイミーの弟)が気付くラストも良き味わい。最後に、ジェイクがビリーに会いに来るところなど、ほろりとさせられる。もしかすると「シェーン」だったのかもしれない。

パッカードが、ケリーとジェイクの仲睦まじい様子を物陰から窺う場面などは、苦々しくもままならぬ思いに満ちていて、この悪党に同情する。しかも彼はそのあと、どうでもいい女と寝ようとする。好きな女に相手にされず、適当な女でみじめな気持ちをごまかそうとする。またその女も、警察官のランディ・クエイドが「すまんな」というのに「平気よ(いつものことよ、だったかな)」なんて、少し寂し気に言うのである。青春の残酷さが滲むいい場面である。

今となっては、シボレーやトランザムなど、彼らは映画映えするいい顔をしていたなと懐かしく思う。吹替は1991年水曜ロードショー版だった。